『みんなの教育技術』が入学前後に関する意識調査! 「生活の自立」と「認識のギャップ」の実態が見えるリアルな声を発表
2026/05/25

教師向けメディア『みんなの教育技術』が、保育者向けメディア『HoiClue(ほいくる)』、乳幼児~小学生ママ・パパのための育児情報メディア『HugKum』編集部と連携して実施した、入学前後に関する意識調査をご紹介します。
今回は、全国の小学校教員226名から寄せられた回答をもとに、現場のリアルな声をご紹介します。「生活の自立」と「認識のギャップ」の実態とは?
【調査概要】
■調査期間:2026年3月3日〜3月25日
■調査機関:自社調査。Webメディア『みんなの教育技術』でのアンケート調査
■有効回答数:226人
※本アンケートでは、回答者の負担軽減のため設問を任意回答としています。そのため、設問ごとの有効回答数は異なります。
回答者は50代91件、40代61件を中心に、女性165件・男性50件と幅広い世代から声が集まりました。入学時に身につけていてほしい力としては「身辺自立」199件、「指示を聞いて行動する力」152件が上位に挙がり、生活面の自立を重視する姿勢が浮き彫りに。
一方、近年の新入生に増えた傾向は「感情のコントロールが難しい」165件、「集中が続かない」146件、「家庭の教育格差が大きい」141件が上位を占め、保護者は学習つまずきの原因を「主に学校」に置いていると考える教員が130件と過半数に達するなど、家庭との認識ギャップも見えてきました。
目次
求められているのは”生活の自立”と”指示を聞く力”
Q1. 小学校入学時点でできれば身についていてほしい力は何ですか?(3つまで)
まず、現役の小学校教員に「入学時点でできれば身についていてほしい力」を3つまで選んでもらいました。

最も多かったのは「身辺自立(着替え・片付け等)」で199件と圧倒的多数。次いで「指示を聞いて行動する力」152件、「感情を言葉で表現する力」117件と続きました。「身辺自立」は実に約9割の教員が選んでおり、生活面が自立していることが学校生活の前提になっていることがうかがえます。
一方で、「ひらがなの読み書き」(19件)や「数の概念」(16件)など、学習内容の先取りを求める声は少数派。学校に上がる前に身につけてほしいのは”勉強”よりも”生活”なのです。
「感情のコントロール」と「集中力」に教員の懸念が集中
Q2. 近年の新入生(1年生)に増えたと感じる傾向(複数選択可)
長年現場を見てきた教員の目に、近年の新入生はどう映っているのか——複数回答で聞きました。

最多は「感情のコントロールが難しい」165件、次いで「集中が続かない」146件、「家庭の教育格差が大きい」141件、「語彙が少ない」109件、「デジタル機器への依存」88件と続きました。
「特に変化は感じない」と答えたのはわずか4件。現場の教員の多くが、近年の新入生に何らかの傾向の変化を感じていることが浮き彫りになりました。
自由回答では、「親離れができない子が増えている印象を受けます」、「読解力の低下/計算能力は高いが、概念を理解できない」、「排泄のコントロールができない」など、より具体的な懸念の声も寄せられました。
園に求めるのは”集団行動のルール理解”
Q3. 園(保育施設)にもっと期待したい準備(1つ)
園に対してもっと期待したい就学準備について聞きました。

「集団行動のルール理解」が103件で圧倒的多数。次いで「期待しすぎるべきではない」40件、「生活習慣」38件、「自己調整力」27件と続きました。「学力の基礎」を選んだ人はわずか3件で、園に学力的な準備を求める声は少ないことがわかります。
一方、「期待しすぎるべきではない」が40件と2位に入っているのも印象的です。園と小学校の役割の違いを尊重する姿勢も、教員側に確かに存在しているようです。
保護者に最も理解してほしいのは”個別対応の時間不足”
Q4. 保護者に最も理解してほしい学校の制約(1つ)
学校という場には、家庭や園とは違う制約があります。教員が保護者にもっとも理解してほしいことは何でしょうか。

「個別対応の時間不足」が159件と圧倒的多数で、約7割を占めました。次いで「学級人数の多さ」34件と、学校の人的リソースの限界に関する項目が上位に。
自由回答にも、「30人学級で担任1人で勉強中心に1人で指導していることを理解しているか。ベタ付きの支援はほとんどない」、「教員が毎日どんな働き方をしているのか、ご存知ない方も多いと思う」など、現場の切実な声が寄せられました。
園の先生は小学校のことを”ある程度”理解している
Q5. 園の先生(保育者)は小学校入学後のことをどの程度理解していると思いますか?(1つ)
園と小学校の連携を考えるうえで、お互いの理解度はどう感じられているのでしょうか。

「ある程度理解している」が131件と過半数を占めましたが、「あまり理解していない」「ほとんど理解していない」を合わせると68件と、約3割が園側の理解不足を感じていることがわかりました。「十分理解している」はわずか23件にとどまっています。
園と小学校は隣接する教育機関でありながら、お互いの実情を十分に共有しきれていない現状が浮かび上がります。
学習つまずきの原因——”主に学校”と見られている?
Q6. 保護者は子どもの学習つまずきの原因をどこに重く置いていると思いますか?(1つ)
保護者の意識を、教員はどう推測しているのでしょうか。

最多は「主に学校」で130件。教員側から見ると、学習つまずきの原因を学校に置く保護者が多いと感じられているようです。「子ども本人」(47件)、「学校と家庭の半々」(36件)が続き、「主に家庭」と捉えていると考える教員はわずか9件にとどまりました。
ここには、教員と保護者の認識のギャップがはっきりと見えます。学校としては「家庭での生活習慣や言葉かけが基盤」と感じているにもかかわらず、それが保護者には十分に伝わっていない——そんな”すれ違い”の構図が浮かび上がります。
就学接続の最大の課題は”発達理解のズレ”
Q7. 園からの就学接続で最も課題だと感じる点(1つ)
就学接続でもっとも課題だと感じる点を聞きました。

最多は「発達理解のズレ」62件、次いで「保護者認識のズレ」55件、「情報共有不足」51件、「時間・制度上の制約」36件と続きました。
「ズレ」と「不足」——上位3つに共通するのは、関係者の間で共有しきれていないものへの懸念です。子どもの発達や特性を、園・家庭・学校がいかに同じ目線で捉えられるか。それが就学接続の鍵を握っているといえます。
自由回答でも、「情報共有不足と時間・制度上の制約ってほとんど同義だと思います。そして、情報共有不足による発達理解のずれや保護者認識のずれが起きていると考えれば上4つは全て同義に聞こえてきます」という鋭い指摘も寄せられました。
園の先生に問いかけたい”本音”
Q8. 園の先生に一つだけ聞きたいこと(自由記述)
自由回答で「園の先生に聞きたいこと」を聞いたところ、次のような声が多く寄せられました。
▼ 就学準備の実態を知りたい
- 小学校へ進学するまでにどんなことを身につけさせるのか、園で共通理解や目指す姿のようなものがあるのか?(50代女性・千葉県)
- 保育園ではどんな力を最低限身につけて小学校に送ろうと考えていますか?(50代女性・東京都)
▼ 発達課題への対応について
- 園の段階で加配が必要なお子さんがいた場合、就学に向けてどのような話をしているか知りたいです。(通常での支援方法や、支援学級・支援学校の検討)(30代女性・静岡県)
- 発達障害のこと、愛着障害のこと、小学校に上がった後に大きく影響することについて勉強していますか?実践していますか?(50代女性・宮城県)
▼ 集団生活への準備について
- 園児が椅子に座って、話を聞いたり作業をしたりする時間は何分なのか。(小学校は45分)(40代女性・茨城県)
- 集団に馴染めない児童がいる場合、どのように対応しているか。また、教える側の何を変えようとしているか。(50代男性・東京都)
▼ 引き継ぎへの率直な思い
- 正直に子供の実態を知らせること。入学して一番困るのは本人なのだから。(60代以上男性・大阪府)
- 手立てが必要な児童についてしっかり情報共有をしてもらいたいです。(50代男性・岡山県)
▼ 教育観・関わり方への問いかけ
- 学校と園の違いはなんだと思いますか?※入学前から学校に適応させることを重視しているようで、自分で考えて挑戦する体験をやってなさすぎると思うからです。やる前から無理、難しいと言う子があまりにも多いです。(50代女性・大阪府)
- 子どもを教え導くという意識はあるのですか?それとも決められた時間、あずかっておけばいいという認識でなのすか?(50代男性・兵庫県)
保護者に伝えたい”教員の本音”
Q9. 保護者に一つだけ伝えたいこと(自由記述)
最後に、教員から保護者へのメッセージを自由回答で聞きました。
▼ 家庭の役割」を見直してほしい
- 学校に通わせてさえいれば勝手に子どもは成長していくのではなく、児童と家庭と学校とが三位一体でともに成長していくことが望ましい。(40代男性・和歌山県)
- すべて学校任せではなく、親にしかできない役割があることを分かってほしい。(30代女性・宮崎県)
▼ 学校は”集団生活を学ぶ場”
- 学校は教育を受けられるサービス機関ではなく、「学校は子供を一緒に育てる対等なパートナーである」と考えてもらえたら、ありがたいです。(40代女性・東京都)
- 小学校は多様性を学ぶところ。保護者も子どもを真ん中に、その多様性を学んでほしい。自分の普通を押し付けないで。(50代女性・長崎県)
▼ 個別対応の限界を理解してほしい
- 保護者にとってはもちろん、教師にとっても大切なお子さんですが、35人の中の1人になってしまうことを理解していただきたい。必要な配慮は遠慮なくはっきりと申し出てもらいたいが、建設的に対話をして対応を決めていきたい。(30代男性・神奈川県)
- 園はとにかく手厚い指導で、子供たちを複数で見ているため、先生たちにも心の余裕や個別対応の余裕があります。でも、小学校は担任一人での対応なので、とにかく心の余裕や個別対応の余裕はありません。子供も保護者も不安だと思いますが、先生たちも手一杯で手探りの状態です。一緒に少しずつ慣れていきましょう!(30代女性・東京都)
▼ 「親の言動」が子どもに影響する
- 子は親の鏡です。親が他責思考なら、子どもも誰かのせいにします。親が学校や先生の愚痴を言えば、子どもも学校で先生の言うことを聞かなくなります。学校と同じ方向を向いて教育に力を入れていきましょう。(30代女性・広島県)
- 子どもの前で、担任や学校の悪口を言わないでほしい。(40代女性・茨城県)
▼ 信頼して見守ってほしい
- 学校は社会の入り口です。だからこそ子供も失敗を繰り返しながら学んでいきます。心配もたくさんあるかと思いますが、子供を信じて毎日送り出してください。(30代女性・東京都)
- 入学したてのこどもは、学校でとてもがんばるため、自宅では赤ちゃん帰りをすることがある。しっかりと受け止めてもらうことでパワーをためて意欲的に学校生活に向かうことができる。(50代女性・北海道)
▼ 「協力」のスタンスでつながりたい
- 何かあればクレームではなく、相談という意識で先生に声をかけてほしい。(60代以上男性・北海道)
- お子さんを一緒に育てる伴走者として、教員のことを認識し、共に協力していけたらありがたいです。(30代女性・静岡県)
アンケートから浮かび上がる現場のリアルな声
今回のアンケートから、現役教員のみなさんの中にある、いくつかの強い思いが浮かび上がってきました。ひとつは、「身辺自立」と「指示を聞いて行動する力」を重視する姿勢。学習面の先取りよりも、生活面の自立や集団行動への適応こそが、小学校生活の土台になると教員たちは考えています。
もうひとつは、近年の新入生の変化への懸念。「感情のコントロール」「集中力」「語彙」など、教員の多くが何らかの変化を肌で感じており、その背景に「家庭の教育格差」や「デジタル機器への依存」が指摘されました。
そして保護者へのメッセージからは、「学校にも限界があること」「親にしかできない役割があること」「信頼して見守ってほしいこと」——現場で奮闘する教員たちの、率直な思いが繰り返し語られました。
入学前後の”すれ違い”は、決して悪意から生まれるものではなく、それぞれの立場からの真剣な思いが、少しずつ違う形をとっているだけなのかもしれません。この結果が、教員・保育者・保護者の三者が同じ方向を向くための、小さなヒントになれば幸いです。
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