小学館DIMEトレンド大賞受賞社に特別インタビュー!! マスなき時代を覆した「ヒットの裏側」
2026/01/20
2025年12月11日、東京ポートシティ竹芝で行われた「2025 第38回小学館DIMEトレンド大賞」(関連記事)。価値感が多様化した現在、トレンドの潮流は“パーソナル化”し、マスなヒットが生まれにくくなっています。
そんな時代の空気の中でヒットした商品・サービスのキーワードは“共感”と“未来志向の価値観の提案”、そして昭和・平成のヒット商品の“リブート”でした。その新潮流を捉え、部門賞を受賞した中から4社に、受賞商品・サービスの開発秘話や今後の展開について伺いました。

■プロダクト部門受賞
【本田技研工業】
リバイバルを超えた“温故知新” 24年目の“新PRELUDE”

2025年9月5日、約24年ぶりとなる新型「PRELUDE」が登場。発売1か月の販売台数は目標の8倍となる2,400台に達するなど車好きのあいだで大きな話題となっています。世界の車市場はミニバンとSUVが主流となって久しく、クーペスタイルのスポーツカーは一部のファン向けアイテムとなっています。実際、2025年の日本国内における販売台数ランキング(※)を見ても上位はミニバンとSUVが占めており、その状況に一石を投じたのがHONDAでした。
※乗用車ブランド通称名別ランキング(2025年1月~11月/一般社団法人日本自動車販売協会連合会)
そこで、本田技研工業株式会社 LPL チーフエンジニア・山上智行氏にお話を伺いました。
――24年ぶりに「PRELUDE」を復活させた意図を教えてください。
実は「PRELUDEを復活させよう」というプロジェクトではなかったんです。「PRELUDEの新モデル開発」ではなく、「HONDAが、現代に車の新しい価値を示すとしたら、それは何なのか?」というのが、新型車開発の原点でした。そしてたどりついた答えが、“スポーツモデルを持つ”という強い意志。そして、カーボンニュートラル、電動化が本格的になっていく中でも“操る喜び”を忘れず継承していくこと、つまり「新しいハイブリッドスポーツ」だったんです。
そのコンセプトをベースに、“デザイン・ダイナミクス・スペシャリティー”という3つの要素を核にして開発を進めました。そして新型車の命名する段階になり、いろいろなネーミングを考えている中で、それらは常に時代を切り開いてきた歴代の「PRELUDE」のコンセプトを引き継いでいることに気づいたんです。
プレリュードには「前奏曲」という意味がありますが、時代の先駆けという意味にも通じます。昭和から平成時代の先駆けだった車が、全く新しい価値を示す車となって令和の時代を先駆ける。そのイメージを体現する車名として「PRELUDE」がピッタリはまったんですね。なので、「PRELUDE」という名前で開発したのではなく、後から襲名したという言い方が適切かもしれません。
――開発で特にこだわった点は?
コンセプト設計やデザインの方向性で悩んでいたとき、ふと幼い頃の青空に浮かぶグライダーの思い出がよみがえったんですね。そしてグライダーの搭乗体験などを通してグランドコンセプトである「UNLIMITED GLIDE」が固まりました。そこには「グライダーのようにどこまでも行きたくなる気持ちよさと、非日常のときめき」という意味を込めています。その「非日常のときめき」には、HONDAの強みである「エンジン」が最大限に活かせる「Honda S+ Shift(ホンダ エスプラスシフト)」を導入し、クリーンなハイブリッドと両立させながらワクワクするような心地良い走りを実現しました。

――反響は大きかったですね。
前回から四半世紀経っておりますので、お客様も世の中も変わっています。デザイナーも若手を起用しましたが、昔のイメージに引きずられなかったことも良かったです。当時の日本は活気に満ちあふれていましたが、その頃を思い起こすような車になったと思います。往年のスポーツカーファンも、これから車を運転する人も、「PRELUDE」でときめいていただけたらうれしいですね。
「PRELUDE」
■レジャー・リテール部門受賞
【ジャパンエンターテイメント】
“お客様の声”こそ進化の源 沖縄観光に新たな楽しみを創出する“ジャングリア沖縄”

2025年7月25日にグランドオープンした「ジャングリア沖縄」。西武園ゆうえんちやハウステンボスの支援などでも知られる森岡毅氏が率いる株式会社刀が中心となり、地元沖縄のオリオンビールやリウボウなど地元資本が多く参画するテーマパークで、特に開業前後は各メディアで大々的に取り上げられるなど大きな話題となりました。国内最大規模の広さのテーマパークには沖縄県の大きな期待がかかる一方、アトラクションやレストランの待ち時間、気候への対策などの課題も示された開業半年間を、運営する株式会社ジャパンエンターテイメント 代表取締役 加藤健史氏に振り返ってもらいました。
――開業は大きな話題になりましたが、当初立てられていた目標への達成度はいかがですか?
おかげさまでたくさんの方にお運びいただき、今年登場する新しい大型ライドアトラクションへの投資を予定通り始められるなど着実に推移しています。アトラクションだけでなく、飲食や物販は想定以上の反響で、パーク体験をより盛り上げる心強い要素となっております。
――国内と海外の方のどちらに比重を置いていますか?
沖縄県全体への旅行者の比率はおおよそ国内が7で海外からが3です。広告などの認知活動をまずは国内から開始しているため、現在は国内からのお客様が多いですが、今後、徐々に海外の方の割合が増えていくことを想定しています。
――開業当初、SNSを中心にややネガティブな話題や厳しい意見もありましたが、それらは解消されているのでしょうか?
頂戴した多くの貴重なご意見は毎日吸い上げて、ひとつずつ対応してきました。来場者に短い待ち時間でご案内できるよう、またゆったり体験していただけるように、運営方法の見直しや運営練度の向上…たとえば午後入場のパスを販売し、混雑の分散化を図るなどサービスの向上を図っており、そういった取り組みによって大きく満足度が上がっています。改善した内容につきましては公式ホームページや公式Xに「PROGRESS REPORT」として公開しておりますのでぜひご確認ください。

――先ほど新しいアトラクションのお話もありましたが、これからも規模は拡大していくのでしょうか?
現在は約120ヘクタールの敷地の約60ヘクタールの部分を活用してパークを展開しているので、当然拡張の余地があります。今後、沖縄の魅力を拡げるようなアトラクションの投下や、ショッピングや宿泊など、新しい目的で“ちがうものをつくる”可能性もあると思います。皆様の“沖縄の旅が最高になる”ために必要なものを用意していきます。
――「ジャングリア沖縄」を目的に行く人を増やしたいということですか?
我々のパークは、都市部のテーマパークと違い、週末に行くレジャー施設ではなく、沖縄を旅する中にあるパークです。「ジャングリア沖縄を目的に来て、遊んだら帰る」のではなく、自然や文化、人、食といった沖縄に存在する素晴らしい価値に触れる中の1つとして「ジャングリア沖縄」を楽しんでいただきたいのです。
沖縄の旅の価値を高める体験、旅をより一層楽しんでいただく体験を提供することが、我々が実現しなければいけないことであり、それらが昇華する場所としての役割をこれからも果たしていきたいですね。
「ジャングリア沖縄」
■グルメ・フード部門受賞
【資さん】
“資さんうどん”の“オンリーワンの味”を全国に うどん文化の広がりがよろこび

2024年にすかいらーくグループに入り、2025年2月24日、両国に出店した東京1号店が連日大賑わい。その後も千葉、埼玉、神奈川、群馬と立て続けに展開。先に進出していた関西圏への出店も続けており、未出店エリアへの進出や海外出店も視野に事業を拡大している「資さんうどん」。北九州のソウルフードはいかにして全国区となったのか、その秘密を、株式会社資さん 代表取締役会長 崎田晴義氏に伺いました。
――九州の一地方のソウルフードを全国展開することになった理由を教えてください。
弊社には50年の歴史があり、北九州での認知度は90%を超えています。子供の頃から朝昼晩食べていた“資さんうどんの味が染みついている方々”が大人になり、関東や関西に移られた。でも近くに店がないし、かといって頻繁に地元に帰るわけにも行かない。そうした方々の「資さんうどんを食べたい!!」という熱い想いに応えたい、というのが一番の理由ですね。
もう一つの理由としては「うどんの選択肢を全国に広めたい」という気持ちがあります。ラーメンの場合、麺の種類もスープの種類もたくさんあります。お客さんが「今日は味噌、今日は塩……」と選択できるし、各地のご当地ラーメンが東京や大阪でも食べられる。一方、うどんには大きく分けて地元の個人店か、讃岐うどんのチェーンの2択…という感じで、日本全国にご当地うどんはたくさんあるけれど、ローカルで留まってしまっている。それではうどん文化は広がらない。
だからこそ、うどんにもいろいろなバリエーションや選ぶ楽しさを感じていただきたいのです。
――結果、北九州出身以外の方にも受け入れられました。
地元出身の方々のアナログのマーケティング=口コミが我々を支えてくれています。家族や友達や同僚を連れてきて「うまいだろ」「安いだろ」と。おかげさまで私たちの想定以上のお客様にご来店いただいているので、SNSが後からついてきている状況ですね。
――行列が絶えない理由はなんでしょう。
飲食店はたとえ行列ができたとしても、その状態を維持することはとても難しいものです。しかし「資さんうどん」は昨日今日できたお店ではなく、50年間まじめにやってきた歴史があります。だからちょっとやそっとでは崩れない。
そして、なんといっても“オンリーワンの味”ですね。
コシのあるうどんを食べたいときももちろんありますが、“柔らかいけどもちもちした食感の麺と甘い出汁のうどん”は他と比べようがありません。資さんのうどんは資さんだけでしか食べられない唯一のものなので。私も毎日食べていますが、くせになる味ですよね。 さらには、カツとじ丼やカレーなどのごはんもの、天ぷらやおでんといったサイドメニューからぼた餅などスイーツに至るまで150種類を超える豊富なメニュー、また24時間営業店もある長い営業時間によって「いつ、誰と来ても食べたいものがある」ことが人気の理由だと思います。

――味で一番こだわっているのは何ですか?
「店でちゃんと出汁をとる」ことを徹底しています。セントラルキッチンで均一につくるのではなく“まじめにやっている”んです。店ごとに出汁をとるのは手間もコストも大変ですが、それは絶対に変えません。今年(2026年)には100店舗以上になりますが、300、500、1,000と増えても、北九州の出汁の味は守り抜きます。
北九州から隣の福岡に進出するときも「この味で大丈夫なのか?」「味を変えるべきでは?」と、当時の経営陣は葛藤しています。実際、北九州と福岡やほかの地域で(好みの)味がちがうんです。でも創業者が「この味で行く!」と決断をし、受け入れてもらうことができました。大阪に出店したときも、関東に出したときもそのままです。似たようなうどんは出すことができても、この味と食感は資さんでしか食べられないオンリーワンだからこそお客様が来てくださっています。
――この先の展開について教えてください。
よく聞かれますが、競合他社がどうとか、うどん戦争ですとか、そういったことはぜんぜんありません。今後も店舗は増やしていきますが、1店1店地域に根ざし、地元の方に長く愛される「いつも気軽に行ける資さん」をめざしてきちんと育てていきます。
ラーメンと同じように各地のご当地うどんが全国に広まって、うどんを食べてくださる方がひとりでも増え、市場が大きくなっていくこと、弊社がその先例となればと願っています。
「資さんうどん」
■プロダクト部門受賞
【バンダイ】
デジタル時代だからこそ“玩具(おもちゃ)の原点”にこだわった新“たまごっち”

2025年7月12日に発売された最新作「Tamagotchi Paradise」は前作比400%超という予約が入るなど、発売前から大きな話題となっていました。最新のテクノロジーではなくアナログに回帰した新「たまごっち」は、社会現象となった1996年の第一次ブーム、2004年の第二次ブーム、アニメ化された2009年などと並ぶ一大ムーブメントとなっています。その開発秘話と人気の理由について、企画開発を担当した株式会社バンダイ トイ事業部 青柳知里氏にお話を聞きました。
――「たまごっち」はずっとつくり続けてきたのでしょうか?
初代が社会現象になり、その後少し休憩期間を挟んで2004年からはずっとつくっています。その2004年頃からのユーザーさん世代が今の「たまごっち」を支えてくださっているんです。
――今回の「Tamagotchi Paradise」がこのかたちになった経緯を教えてください。
2年に1回くらいのペースで新機種を出しているのですが、前作はWi-Fiを搭載するなどしたこともあり値段が高くなってしまったので、今回は「安くしましょう」というところからスタートしています。また“おもちゃらしく原点回帰する”という意図もあり、アナログのダイヤルと、フタを開けてガチャンとつなげて通信をするようにしました。いわゆる“手遊び感”を大事にしています。
――遊び方の基本は変わっていませんね。
ごはんをあげて、うんちを掃除してといった部分は同じです。操作方法も変えていません。「たまごっち」の変えてはいけない部分は変えず、それ以外は時代や企画に合わせてドラスティックに変えています。
――ダイヤルに落ち着くまでにどんな経緯があったのでしょうか?
始めに「ラボ(研究所)」というコンセプト、惑星ごと大量のたまごっちを育てるという構想は決まっていました。(別案は)3~4案あり、それらを調整しては「ちがう」ということを繰り返して、ズームダイヤルのギミックに行き着きました。顕微鏡のようにズームダイヤルを回すことで(たまごっちの)体の中の細胞から、たまごっちの住むフィールドや宇宙までを行き来することができ、それぞれの階層でたまごっちの観察やお世話を楽しむことができます。

――もっとハイテクにもコンパクトにもできるのに、あえて“おもちゃ”にするという企画を通すのは大変だったと思うのですが?
私たちバンダイには「これがおもちゃだ!」という共通認識があるので、そこに困難はありませんでした。発売して初めてわかったのですが、今の子供たちはハイテクなものが身の回りにあふれすぎているため、逆にこのようにガチャガチャしたおもちゃっぽいものが新鮮に感じられるようですね。また、この“おもちゃ感”が今の大人には懐かしく感じられるものだったようで「たまごっち」に戻ってきてくれました。その相乗効果もあって、親子で遊んでくださる方がたくさんいらっしゃいます。
――少し気の早い話ですが、次の「たまごっち」はどうなりそうですか?
それはまさに“絶賛悩み中”です!
「Tamagotchi Paradise」








