根強いファンの多い過去の名作などもタイアップにうまく繋げたいです。
『ベツコミ』前田未央編集長インタビュー

2023/10/06

長く愛され続ける作品が多く、熱心な固定ファンがついています

前田未央編集長は2000年に小学館に入社し、一貫して少女漫画の部署に所属。最初、『ちゃお』に配属され4年在籍、『Sho-Comi』に異動して3年、『ちゃお』と『Sho-Comi』の共同編集の『ChuChu』に2年。第1子の産休・育休をへて『ちゃお』に3年、第2子の産休・育休後、『ちゃお』に復帰し、2015年に『ベツコミ』に異動。2022年に編集長に就任。

大河的な物語と等身大の恋愛ドラマのバランスを考えたコンテンツ

1970年に創刊し、2020年に50周年を迎えた『ベツコミ』(旧誌名『別冊少女コミック』)。本誌と増刊の『デラックスベツコミ』はデジタルでも配信し、デジタルオンリーの『ベツフラ』や『& FLOWER』(『Sho-Comi』『Cheese!』と共同編集)も出しています。

「メインターゲットは女子高校生ですが、『ベツコミ』は長く読んでくださっている読者さんがすごく多いんです。高校生のときから読んでいて今40代です、とか、ずっと買っていて今は高校生の娘と一緒に読んでいます、という方が結構いらっしゃいます。数として多いのは高校生や大学生ですけど、20代から40代、50代くらいまで読者は幅広いですね」

読者に対しては、知的で作品をよく読み込んでくれる、という印象を持っているとのこと。

「大河的なファンタジー作品などは、設定が複雑になっていったりするものもあるんですけど、そういうものにもちゃんとついてきて、何なら深掘りしてくださったり。いい意味でおたくっぽいところを持っていて、意思が強く、自分の好きなものは好きっていう気持ちをずっと持ち続けているようなイメージですね。独特の世界観を持つ作品や作家さんには、本当に固定ファンがずっと離れずについていて買い続けてくれています。自分がハマったものにはお金を惜しまないという感じでしょうか。一般的に女子高生は使えるお金が多くないと思われがちですけど、年齢層の高い読者もいらっしゃるし、皆さん、好きなものには惜しみなく、ということは強く感じています」

『ベツコミ』には伝統的に、一方にファンタジーなどのドラマチックな物語性重視の作品、もう一方に王道の恋愛もの、高校生や大学生が主人公の等身大ラブストーリーがあります。

「長い大河的なものは雑誌の土台を支えてくれる作品ですが、一方で新しく入ってきても読みやすい恋愛ものなどの作品もきちんとある、というバランスは考えています。本誌にはほぼ毎号タレントさんのグラビアをつけているんですが、それ目当てで新規で買ってくださる方も結構増えていて、タレントさんによっては完売状態になったりもするんです。そういう方々が読んだときについていけないということにならないよう、入りやすく、かつ続けて読みたくなるようにというのは、かなり意識してやっています。読者アンケートを見ると、初めて買ったけど読んでみたらおもしろかったのでこれからも買います、という方が少なくないので、そこを狙って新しい読者もどんどん増やしていきたいですね」

メインターゲットや少女漫画の特徴を活かしたコラボレーション

読者への訴求力が強いタイアップ先として、まず挙げられるのが食関連と美容系です。

「今うちで小料理さんやカフェを舞台にした連載が人気なんですが、少女漫画と食は相性がいいと思うんです。それで食品メーカーさんとタイアップして、漫画にその商品を登場させたりするとおもしろいかなと。あと、色をのせたり描いたりするのが絵と共通するせいか、じつは漫画家さんにはメイク好きの方が多いんですよ。最近は美容もちょっとおたく寄りな部分があったりもするので、美容と漫画も親和性が高いと思います」

また、メイン読者の高校生を狙った大学や専門学校のPRにも、高い効果が期待できます。

「以前に大学さんと、勧誘のためのPR動画をコミカライズするという形でコラボしたことがあります。全面的に『ぜひうちの大学へ』みたいな感じではなく、その大学を舞台にしたドラマ仕立ての、本当に高校生の青春ものという作りの動画です。そういったものを企画の早い段階から、こちらもアイデアを出して一緒に作れたらいいなと考えています。また専門学校の専門性の部分も、漫画にするとわかりやすいかなと思いますし、進学じゃなく就職ということでも、漫画で企業さんのイメージづくりをしたり、あまり知られていない職業を紹介したり、一般に男性の仕事だと思われているけれど、これからはもっと女性を増やしたいというような業界さんのアピールなどにも、お役に立てるかなと思います」

そのほか、観光スポットや自治体の魅力PRにも、少女漫画の特徴が活かせるといいます。

「少女漫画っていわゆるデートスポットがよく出てくるんですよね。主人公のカップルが夜景のきれいなところや遊園地なんかにお出かけするシーンが多いので、そうしたスポットの紹介もできます。それと少し前に、コラボじゃないんですけど、漫画家さんの出身地漫画の別冊付録みたいなのを作ったことがあって、その土地土地の魅力が伝わるようなエピソードが出てくるラブストーリーを何本か集めたんです。これがかなり好評で、漫画家さんも楽しんで描いてくださいましたし、おもしろくて印象に残っています。そういった形で自治体さんとコラボできたらいいなというようなことも考えています」

ドラマ化される作品も多い『ベツコミ』ですが、創刊50周年を超えている雑誌ならではの数多い過去の名作が、新たに注目を浴びることが増えているそうです。

「長く愛される作品には、火がつくまで多少時間のかかるものが少なくありません。編集部にドラマ化の打診が入る作品にも、もうかなり前に連載が終わっている昔のものが結構あって、どこから見つけてきたんですかって聞くんですけど(笑)、じつは高校生の頃に読んで忘れられなくて、いつかドラマにしたいと思っていたんです、というような話が多いんです。ぱっと火がつく作品ももちろんありますが、時間をかけて積み上げていく作品を作っていくことも『ベツコミ』の一つの使命かなと思っています。1年じゃ効かなくて3年4年かけて作って10年後に花開く、みたいなことが実際に起きていて、少々不安があったりはしますが、いい作品を作れば誰かが見てくれているというのは実感しています。これからもやはり、時間がかかっても長く愛される、質の高い作品を作っていきたいですし、そうした作品や、根強いファンの多い過去の名作などもタイアップにうまく繋げたいですね」

今後の展望としては、女子高生と親和性の高いSNSをよりうまく使っていくこと、一般的な少女漫画のイメージを変えるような作品を紹介することを考えています。

「今のところX(旧Twitter)がわりと好評なんですが、YouTubeやインスタやTikTokにももう少し手を入れて、編集の裏話だとかストーリーやキャラクターに踏み込んだことを発信し、吸引力を高めたいですね。それと、少女漫画というとカッコいい男の子に告白されて愛されて……というようなイメージがあると思うんですが、社会がジェンダーレスになり、若い人も昔ほど恋愛至上主義じゃないなというのをすごく感じています。そういう社会の流れに合わせ、自分の道を切り開いていく強い主人公とか、男の子が主人公の話があってもいいと思いますし、そういう作品の魅力も伝えていきたいなと。ただ、キラキラした溺愛される恋愛の世界というのは、少女漫画でしか表現できないもので、そこがすごく好きな読者さんもいます。人の魅力を一番よく表せるのは恋愛かなとも思うので、それはそれで大切にしつつ、少女漫画のイメージを変えるような新しい作品も紹介していきたいですね」

数年前から高校野球ファンだという前田編集長。自身は全くスポーツをせず、できれば体を動かしたくないタイプとのことですが、子どもが野球をやり始めたのがきっかけで、まんまとハマってしまったのだとか。地方大会を見に行ったり夏は甲子園に行ったりと、試合を見るのはもちろん好きだけど、その一方で選手の生い立ちなどのストーリーやキャラクターの部分にどうしても惹かれてしまい、選手のインスタなどもフォローしているそうです。これはやはり漫画編集者の視点かなと自分でも思っているという前田編集長は、今後も魅力的な作品作りに力を注ぎたいと意欲を燃やしています。

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