大人のファンが喜ぶ知的で質の高いコラボレーションができます。
『フラワーズ』古川麻子編集長インタビュー

2023/09/22

多くの人に愛される作品をきちんと届けることが雑誌の使命だと思います

古川麻子編集長は1995年に小学館に入社。青年誌『ビッグコミックスペリオール』に配属され5年在籍。その後やりたかった少女漫画誌に異動し、『別冊少女コミック』と同誌がリニューアルした『ベツコミ』に約8年、『ちゃお』『Sho-Comi』に各2年在籍。『ベツコミ』に戻ったのち、『フラワーズ』に異動して2019年に編集長に就任。

物語好きで熱量の高い読者を満足させる魅力的な作品群

少女漫画界のレジェンドともいうべき作家陣を擁する『フラワーズ』。下は30代から、上は長年好きな作家を追いかけている60代くらいまでの、大人の女性読者に愛されています。

「読者は知的で熱心。感性が豊かで『物語』がすごく好き、という方々ですね。以前に作品を宝塚歌劇団で舞台化したときや、デパートで原画展を開催したときに、先方の担当者から『フラワーズの読者の方はうちのお客様の層と雰囲気がとても近いですね』と言われたんです。キラキラしたものが好きで、ずっとファンで熱心に通ってくださる。言われて、あ、ほんとだと思いました。上品なおたくみたいなところがあって(笑)、私はおたくという言葉をプラスに捉えているんですが、好きなものに夢中になれる情熱をずっと持ち続け、時間やお金をかけることを厭わない。そういう上質な読者に愛されているなと感じています」

熱心な読者の圧倒的な支持を得ている理由はやはり、魅力的な作品群。長らく第一線で活躍してきたベテラン作家から新進気鋭の若手まで、実力派の描き手が揃っています。

「萩尾望都先生を筆頭に、少女漫画界のハイエンドというか最上級のクォリティの作品を生み出してきた先生方がたくさんいらっしゃいます。皆さん知的でパワフルですね。漫画を描くのってすごく体力が要りますから。それに魅力的な女性が多く、いつも感化されていますが、そうした先生方が若い才能ある新人さんを『フラワーズ』に引き寄せてくれるんです。やはり漫画家さんには、憧れの先生と同じ雑誌に載りたいという思いがあるんだと思います。私たち編集者は、そんな先生方が気持ちよく描けるようにお手伝いしたいし、できるだけ刺激になるものを差し上げたい。若い読者向けの雑誌はおそらく、先生に目標を見せて走ってもらう、もしくは引っ張っていくという感覚があると思うんですけど、私達は先生をお支えしながら一緒に走っていく、伴走するというイメージですね。先生方に、ここなら安心して描きたいことが描けると思ってもらえる雑誌でありたいと考えています」

長く愛される作品が多いことも『フラワーズ』の特徴ですが、過去の名作をリバイバルさせることも視野に入れています。

「ベテランの先生方はヒット作をたくさん持っていらっしゃって、過去にとても有名になった作品もあるので、そういうのを掘り起こしたいなと思っています。今読んでも新しい作品が多く、名作を埋もれさせているのはやはりもったいない。リバイバルブームでもありますし、そういう作品がもう一度読者にうまく届くといいなと考えていて、それが成功した例に、吉田秋生先生の『BANANA FISH』という作品があります。30年くらい前の作品なんですが、2018年にアニメーション化され、地上波で放映された後、各配信サイトで今も配信されています。これが若い方にたいへん支持され、今も新しい若い読者の方から熱心なお手紙をいただいたりします。多くの人に愛される作品をきちんと届けることは、雑誌の使命かなと思います」

クォリティの高さが読者を引きつけるコラボレーション

タイアップ実績としてまず挙げられるのは、作品の舞台化やドラマ化、映画化での成功です。

「うちの読者は物語を愛している人たちが多いので、最初から作り込まれたタイアップというのは、あまり相性がよくないような気がします。その代わりと言いますか、私が関わってきた中でとてもすばらしい関係ができたなと思っているのは、原作をリスペクトして、互いの良さを掛け合わせるようなもの。萩尾望都先生の『ポーの一族』の宝塚歌劇団での舞台化はまさしくそれで、大ヒットして、宝塚ファンにも原作ファンにも、そして先生にも、すごく喜んでいただきましたし、お陰さまで本も売れました(笑)。最近では田村由美先生の『ミステリと言う勿れ』のドラマ化、映画化も大ヒットしています」

また、知的な大人の女性の読者層はデパートなどとの相性が良く、大きな成果を上げています。

「デパートで開催していただいた原画展も大盛況でした。デパートのほか、読者が品質の高さを認めているものとの相性は良くて、『フラワーズ』連載作品と食器の高級ブランドや、お香の老舗とのコラボも大好評でした。また、絹田村子先生の『数字であそぼ』という作品は京都の名門大学が舞台なんですが、京都大学理学部とコラボすることになり、理学研究科の広報冊子『京大理で学ぼ。』に協力したりしました」

作品のTVドラマ化や舞台化、アニメ化などのメディアミックスが得意な『フラワーズ』ですが、男性向けメディアとの連携も好評です。

「ビジネス誌『プレジデント』のPRESIDENT OnlineでのSNS施策で、『数字であそぼ』の大学生たちが数学的思考でマルチ商法を論破する話がバズりまして、男性の読者も増えました。萩尾望都先生や吉田秋生先生は男性の愛読者も多く、そういう意味では少女漫画の中では性差があまりないと言えるんじゃないでしょうか。もちろん女性に向けたものであることは確かで、女性が活躍したり、頑張って自立していく物語や、男の子ばっかり出てくる物語でも女性が読んで楽しめるものを、少女漫画として描くということを強く意識しています。ただ、すごく上質なものになると、性別が関係なくなってくるんですね。ものすごくいいものは男性も女性も、どの角度から見ても、物語としておもしろくなるんだと思いますから、そういうものにもトライしていくつもりです」

今後の目標としては、世界に配信できる映像化を実現できたらと考えているとのこと。

「国内でのTVドラマ化などもすごくよく作っていただいているんですけど、これからはやはり全世界配信を目指したいですね。配信して世界中の人に楽しんでもらえるドラマにできうる原作を、うちの雑誌で作るべきなんじゃないかと考えますし、またそれができる力のある作家、魅力のある作品が揃う雑誌だと思うんですね。配信はエンターテインメントの大きな転機で、昔の作品も見られますから、名作については追い風だと思っています。パソコンやスマホなど、パーソナルで見られるのも良い点で、物語に触れてもらえるチャンネルがより増えたなと。世界配信になっていろんな国の人が原作を読んでくれて、いろんな国からファンレターが届いたりしたら、とても嬉しいだろうななんて夢を膨らませています」

最近、中国ドラマ、韓国ドラマにハマっている古川編集長。コロナ禍がきっかけで見始め、配信で一気に全話見られて夢中になったといいます。どちらもとてもお金がかかった世界観や美術、衣装、脚本で、キラキラした美男美女が大勢出てきて、最高のエンターテインメントであり、漫画との親和性もすごく感じるとのこと。こうしたドラマがアジア各国や欧米でも配信され、非常に多くの視聴者を引きつけていることを考えると、日本もそこに参入できたほうがいいと強く感じるそうです。もともと仕事とプライベートを切り分けたいタイプで、中国・韓国ドラマも完全に鑑賞する側になって見たいと思いつつ、どうしても仕事に結びつけて考えてしまうという古川編集長の、今後の手腕にどうぞご期待ください。

『フラワーズ』の媒体資料ダウンロードはこちら:

関連する記事・事例のご紹介

関連メディア情報

マンガ・キャラクターのビジネス活⽤はこちらからお気軽にご連絡ください。

利用規約について