どんなご相談にも柔軟に対応できる「日本一協力的な編集部」だと自負しています。『コロコロコミック』益江宏典編集長インタビュー

2024/05/17

商品や企業案件的なものに対して距離の近い作家さんが多いです

益江宏典編集長は1998年、小学館に入社し、『コロコロコミック』編集部に配属。カードゲーム「デュエル・マスターズ」などの製作に携わり、現在も連載が続く人気ギャグ漫画『でんぢゃらすじーさん』の編集も担当。2018年、『てれびくん』に異動し、主に仮面ライダーシリーズを担当。2021年、編集長になり、2024年2月、『コロコロコミック』11代目編集長に就任。

子どもたちが今求めているもの、おもしろがるものを創っていく

「今の子どもたちは昔とずいぶん変わった、と感じています。僕は最初20年ほどコロコロにいたんですが、当初は親が眉を顰めるようなもの、例えば下ネタっぽいこととか、ホビーで世界を救うとかの男の子だけの妄想の世界みたいなのが人気だったんです。それが、僕が異動する少し前には、親と仲よくなったというのが、まずすごく大きな違いですね。

漫画でも主人公の敵は父親、というのがよくあったんですが、父親や母親がサポートしてくれる人になり、どんどんソフトになってきて、親子が仲良しな時代を反映するようになりました。それで異動して戻ってきたら、子どもたちが〝バズる〟とか、そういうことに反応するようになっていて、ある意味、大人っぽくなってきたのかなと。

イベントや学校訪問で子どもたちと触れ合うとワァキャア子どもっぽい感じは自分が子どもだった頃とそう変わらないんですけど、見るもの読むものは結構大人っぽく、大人が好きそうなものが好きという子が増えました。たぶんYouTubeでバズっている動画を見たりして、そういうおもしろさがわかっているんだと感じます。そこがこの6、7年でかなり変わったところだと思います」

「僕らはやっぱり、子どもたちが今求めているもの、おもしろがるもの、見たら喜ぶものというのを、創っていかなきゃいけない。コロコロは子どもの最先端っぽい感覚の、その先頭を走っていく、というイメージですかね」

コロコロ流のエデュテイメントや企業のイメージアップも

「ずっとオモチャを紹介してきた僕らには、ただ単にホビー漫画を載せるだけなら別の雑誌でもいいじゃん、ということがどこか頭の片隅にあります。なので、各メーカーさまと一緒に考えながら、僕らが記事や漫画を作るならではの切り口を大切にしたいと考えています。その先に、きっと大ヒットが待ってる、そう信じて精進していますし、それはこれからも変わらず続けていきたいです。そうやって今、大流行のベイブレードを含め、脈々とやってきたという思いはあります」

「先ほど言った大人のものを好む小学生、というものともう一つ台頭してきているのがお勉強色のあるものに拒絶反応を示さない、というがあります。コロコロは学年誌とは切り口が違うので、学年誌が2〜3割エンタメで7〜8割お勉強だとしたら、僕らはその逆ぐらいだといいなと感じています。そのあたりの配分をどうやっていくか今研究中です。コロコロにはおじいちゃんから消しゴムまで、色々なキャラクターがいますし、そうしたものとうまく結びついていければと思っています。学習塾など教育関係の企業さまと組んで、遊びながら楽しく学べるようなことができればいいですね」

「コロコロの地方創生企画がうまくいっているので、そうした目線でいろいろな企業さまの紹介ができないかなと。コロコロのヒット漫画は、とがっている、エッジの効いたものか、まるい、ほんわかしたものか、そのどちらかという傾向があって、とがっているほうの代表は『ブラックチャンネル』や『運命の巻戻士』。まるいほうは『デカ杉デッカくん』や『べべべべベイビー』などで、こうしたギャグマンガのキャラは長年ずっと愛されています。

それで、とがっているほうはゲームやホビーと相性がいいんですが、まるいほうは企業さまのイメージと一致するんじゃないかと思っていて。企業さまのイメージに紐づいた形でほんわかギャグ漫画みたいなことをやりつつ、記事でその漫画のキャラクターがその企業さまの紹介をするとか。そういうのは新しいことだし、たぶん受け入れられて人気も出るし、社会勉強にもなって、読者も親御さんも企業さまもコロコロもみんなWinWinというものが作れたりするんじゃないかと思っています」

「漫画のキャラクターはもちろん、ガチャガチャのキャラクターを定期的に作ったり、ゲームのキャラクターをメーカーさんと考えたりもしています。自分たちが持っているノウハウを活かせたらという思いがあるんです。コロコロのようにキャラクターをこれだけ前面に押し出して漫画を作っている編集部は珍しいと思います。他の漫画誌はドラマ中心のものが多いと思います。僕らが作っているのはキャラクター中心のもので、長年漫画でキャラクターを取り扱ってきたノウハウと、子どもに接して子ども目線を持っているという強みがある。それで何かできないかと」

「新規のキャラクターを作ったり、また描き下ろしたり、柔軟性という意味では、コロコロはすごく変わった編集部だと思いますし(笑)、作家さんもみんな協力的です。コロコロの作家さんは、いつかホビー漫画を描くことがあるかもしれないとか、ガチャガチャやカードゲームとして商品化されるかもしれないと思っている人が多いと思うんです。おそらく商品とか企業案件的なものに対してもともと距離が近い。コロコロで描くということはイコールそういう部分があるので、作家さんも柔軟性を持っていて、おもしろがってやってくれる人が多いと思いますね。

それから、大きいタイアップでなく、一つのイベントだけで組むというようなこともできます。例えばモデルハウスの見学会に僕らのキャラクターを使ってくれても全然いいですし、何だったら部屋中にキャラクターを貼って、子どもたちがそれを探す、みたいな形もありだと思います。探すうちに、その家の見て欲しいところを自然と体験できたりしたら素敵なことだと思います。そんな、いろいろなことができたらと思っています」

今後は日本だけでなく海外でも通用するものもやっていきたい

「アンケートに企業さまが訊いてほしいことを入れることもできると思います。あるいはQRコードをつけてサイトに行ってもらい、そこで『どれが好きですか?』みたいなことを答えてもらうなど、可能性はたくさんあると思います」

「先にも言いましたが、コロコロは柔軟性があって、自称『日本一協力的な編集部』だと思います。ご相談に対してどこよりも寄り添えるのは僕らだと、これは絶対に自信がある。どういう話でも相談していただければ、柔軟にアイデアを出せると思います」

「今までずっとドメスティックに日本の子どもたちだけに作ればいいという時代が続いていたんですけど、それが変わりつつあるというか、まさに変わらんとし始めているところです。今後は日本だけでなく、北米やアジアの子どもたちにも理解できるようなものに少しずつスライドしていくのかなと。

『デュエル・マスターズ』でアメリカのカードゲーム会社と組んで成功を収めているという実績もあり、海外の映像会社さまやメーカーさまと組んで何かできないかなとか、また国内のメーカーさまと組んで海外でも通用するものもやっていきたいなと考えているところです。今アメリカで日本の漫画が結構受け入れられているので、機会はありそうだし、チャンスが巡りやすくなっているんじゃないかなとは思っています」

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