東芝テック/『幼稚園』 電機メーカーと幼児誌。意外なコラボレーションが生んだ大きな反響

2022/06/29

POSシステムやデジタル複合機などで知られる東芝テック株式会社が、幼児向け生活知育学習誌『幼稚園』とコラボした事例を紹介します。

『幼稚園』2021年5月号の付録「東芝テック セルフレジ」は、実際のセルフレジをモデルに、デザインはもちろん、本物同様のスキャン音や価格読み上げ音声、レシートなど、リアルさを徹底追求。

テレビやSNSで大きな話題となり、「東芝テック」の社名認知度を大いにアップさせるとともに、企画のユニークさが高い評価を受け、日本雑誌広告協会主催の第63回『日本雑誌広告賞』において、最高賞(グランプリ)である経済産業大臣賞をはじめ、タイアップ部門 金賞、日本雑誌広告賞運営委員会特別賞 銀賞のトリプル受賞という快挙を成し遂げました。

この付録企画のそもそもの発起人である、東芝テック(株)の総務部人事企画室参事の渡辺千沙さんに、コラボの経緯や社内外からの反響などについて、お話を伺いました。

タイアップ企画は、紙付録、表紙&巻頭ページ特集(5ページ)、表2純広告、増し刷り小冊子(紙付録付き)の内容で展開

『幼稚園』編集部への直接の電話から企画がスタート

今回のコラボに至るきっかけとなったのは、渡辺さんがテレビで取り上げられていた『幼稚園』2019年9月号付録「セブン銀行 ATM」を見たことでした。

「これはいいな、当社のレジでもできるんじゃないかなと思って、社内の人にこういうのはどうかと少し相談したところ、おもしろそうだねと。当時私は企業の社会貢献活動に携わるCSRの担当だったんですが、上司もいいんじゃないかと言ってくれたので、じゃあ、ということになったんです」

そこで渡辺さんを悩ませたのが、『幼稚園』の付録にするにはどうすればいいか、でした。

「企業から小学館さんへの申し込み方法があるのかとか、そのあたりのことがよくわからなくて。おそらく伝手がないとだめだろうなと思い、そういう人脈を探ろうかとも考えたんですが、時間がかかりそうですし、いっそのこと直接電話してみようかなと」

早速、『幼稚園』編集部に電話をし、付録担当の副編集長・大泉高志が対応しました。

「東芝テックってご存じないと思うんですが、これこれこういう会社で、レジの付録を作ったら絶対におもしろいと思うんですよねという話をしたんです。大泉さんは突然の電話に驚かれたようではあるんですけど、きちんと耳を傾けてくださって、『一度話を聞きたいです。現物を見られますか』とおっしゃっていただいたので、そのあとすぐ、3日後くらいに来社いただきました」

『幼稚園』の付録はかなり先まで決まっていることもあり、セルフレジの付録企画が実際に動き出したのは約1年後。渡辺さんは会社役員へのプレゼンを経て、社内でプロジェクトチームを発足させ、事業部や商品部、営業推進部、技術部など、さまざまな部門をまたぐチームの取りまとめ役として奔走することに。

「付録の制作にあたっては、弊社のいろいろな情報を提供したりしますし、契約関係のこともありましたので、そのあたりのヌケやモレのないように気を配りました。チームの皆と情報を共有しつつ、大泉さんとのやりとりは私が窓口となって引き受けて進めていきました」

「今回のことで、社名を知っていただけるとともに、弊社の新しい一面も少しお見せできたかなと考えています」と語った東芝テック(株)総務部人事企画室参事 渡辺千沙さん

予想を超える反響で、新入社員研修や営業ツールとしても活用

渡辺さんがセルフレジを付録にと考えたのは、CSRの観点から、子供たちに楽しんでもらえたら、ということが第一の理由でしたが、他にも思うところがあったそうです。

「『東芝テック』という社名があまりメジャーではなかったので、何かで認知度を上げられないかなと……」

東芝テックはレジ製造で長年トップシェアを誇っていますが、流通システムや店舗機器、オフィス機器に関わるメーカーのため、世間一般にはあまり知られていませんでした。近年は競合他社の伸びもあり、社名を広めることができないかと考えていたとのこと。

「それともう一つ。弊社では『こども見学会』というのをやっていまして、これはCSR活動の一環なんですが、従業員の子供を会社に招いて、お父さんお母さんの職場のことを知ってもらったり、ショールームでレジの体験をしてもらったりするイベントです。その中で子供に遊んでもらうペーパークラフトがあるんですけど、街並みや公園の噴水を作るというものなので、せっかくならレジのクラフトがあればいいのにと思っていたんです」

そうした渡辺さんの思いから始まったセルフレジ付録は、子供たちの好奇心を満たせるよう、音やレシートなど本物の再現性をとことん追求し、時流に合わせたマイバッグも組み立てられるようにするというこだわりぶり。その反響は予想以上のものでした。

「従業員が確実に買えるようにと、発売前に社内で予約を取ったんですが、その数がすごくて700冊くらいになりました。全国の支社からの問い合わせも相次ぎ、この企画に賛同してくれている人が多いんだなと、そこでまず感じました。

あと、発売1ヶ月前に『幼稚園』のツイッターで付録の紹介をしていただけるということだったので注目していたんですが、すぐに拡散されて、書き込みもとても多く、皆さんに興味を持っていただいているようだったので、『よし!』と思いました(笑)」

『幼稚園』公式ツイッターにアップされた付録動画は再生回数181万回を超え、テレビ各局のワイドショーなどでも大きく取り上げられて、『幼稚園』5月号は即完売。

「発売日がちょうど新入社員の入社日だったので、新入社員研修にも使わせてもらいました。それは、自分が入った会社の主力製品を知ってもらうためでもあり、その製品がこうして小学館さんとのコラボ付録として発売されて、大きな反響を呼んでいるということを実感してもらい、従業員のモチベーションを上げるためということもありました」

また、付録の増し刷り小冊子をショールームのお客様へのノベルティや、営業ツールとして活用。お客様にも好評でした。

「今回のことでかなり『東芝テック』の社名を知っていただけたのではと思います。流通のお客様向けの専門誌のようなものはともかく、これまで一般の雑誌に広告を出したことはおそらくなかったですし、こうした取り組みは初めてなので、弊社の新しい一面を少しお見せできたかな、それで皆さんに『ちょっとおもしろい会社だな』と思ってもらえたのならいいなと、そんなふうに考えています」

視点を変えることで、雑誌広告の新しい可能性が見えてくる

今回のコラボ付録に対する東芝テック社内外の反応は、

  • 今までにないユニークなノベルティなので、話題がふくらんだ
  • お客様との会話のきっかけになった
  • こうした雑誌とのコラボは話題性があり、ニュースにも取り上げられるのでよいと思う
  • 子供が興味津々で、とても喜んだ
  • 家族全員で楽しく付録の組み立てをした
  • 孫とおばあちゃんで練習してからお店に行けると喜ばれた
  • 増し刷り小冊子により、製品だけでない営業接点が発生している
  • お客様より「あの東芝テックかと気になっていた」との声があった

などでした。

企画のユニークさ、新しい可能性が高い評価を受け、第63回『日本雑誌広告賞』最高賞、金賞、銀賞のトリプル受賞

「CSRの観点だけでなく、コロナ禍で営業活動が制限される中、この付録が何か少しでも活用できればとは思っていたんですが、その営業活動の販促ツールとしても大きな反響があり、お客様も喜んでくださって、結果的に賞までいただいたということで、今回のコラボはかなり大きな広告になったと受け止めています。

一粒で三度おいしいという感じで(笑)、もともとCSRのほかに営業販促や企業価値向上にもつながればという思いはもちろんありましたけど、ここまでになるとは予想していませんでした。いろんなところに影響が与えられたということは、やはりよかったですね」

雑誌とのコラボというこれまでになかった取り組みで、渡辺さんが強く感じたのは「新しい可能性」でした。

「『日本雑誌広告賞』の表彰式で審査委員の方に、『タイアップの新しい可能性を感じさせる作品だった』と言っていただいたんですが、弊社の直接のお客様にはならない方が見る雑誌でも、視点を変えれば何かできるんだなということを実感しました。

弊社のお客様のさらにその先の小売店で働いていらっしゃる方にも、自分の職場にあるレジだということで、ちょっと喜んでもらえるとか、さらに自分の子供がそのレジの付録で楽しく遊んでいたら、それはそれでまたうれしいですよね。そういうところにもつながるものだったので、これからも雑誌とのコラボで何か新しいことを探ってみたいと思います」

電機メーカーと幼児誌という、一見つながりのなさそうな今回のコラボレーションの成果は、今後の企業広告の一つの方向性を示すものと言えそうです。

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