お気に入りの作品を見つけて並走していただき、魅力的な関係を築き上げていきたいです。
『ビッグコミック』村上正直編集長インタビュー

2023/06/12

漫画家さんの代表作になるような一作を描いていただくというのが編集理念です

村上正直編集長は1994年、小学館に入社。『ビッグコミックスピリッツ』に配属され、『月下の棋士』や『じみへん』などを担当。その後、『少年サンデー』に異動、『犬夜叉』『モンキーターン』などの人気作を担当後、再びデスクとして『ビッグコミックスピリッツ』に異動。その後、『ゲッサン』の創刊に副編集長として携わった後『ビッグコミックスピリッツ』に戻り、その後、『少年サンデー』『ビッグコミック』の副編集長を歴任。2022年10月から『ビッグコミック』の編集長に。

〝両輪〟揃った『ビックコミック』は家族の間で話題になりやすいコミック誌

1968年に創刊され、今年で55周年を迎えた『ビッグコミック』ですが、中心となっている読者層を教えてください。

「読者アンケートの結果などから、50代、60代の男性が多いです。物心がついた頃に『少年サンデー』を読み始め、『ビッグコミックスピリッツ』などの青年コミック誌を経て、引き続き『ビッグコミック』を愛読していただけているのでしょう。詳細にアンケートを調べてみると、意外と20代、30代の読者も多い。数年前からメールでもアンケートを受け付けていますが、そちらのほうはより顕著に若い世代がリアクションしてくれています。

もちろん、彼らの中で圧倒的な支持を集めている『BLUE GIANT』シリーズの効果もあると思いますが、ほかにも〝お父さんが買っていたから、自然と『ビッグコミック』を読むようになった〟という意見が多かったりします。これは実に納得してしまう傾向で、というのも昔から『ビッグコミック』の表紙は毎号、旬の人、話題の著名人の似顔絵イラストが飾り、いわば正統派なんです。お父さんが通勤途中で購入した『ビッグコミック』を家に持ち帰り、そのままリビングのテーブルなどに放置していても、お母さんは眉をひそめない(笑)。怒らないどころか、逆に連載作品の続きを楽しんで読んでくれている場合も多いようですし、子供たちも読み始めてくれる。結局、気がつけば家族全員で回し読みしてくれているのだと思います。それこそ家族で食卓を囲んでいる時に、表紙を飾った人物の話で盛り上がってくれているかもしれない。そういうところが、『ビッグコミック』の強みのひとつではないでしょうか。

その子供たちが20代、30代となり、一人暮らしを始め、今度は自分で『ビッグコミック』を購入し、アンケートに答えてくれているわけです。もしかしたら、彼らが家庭を持ち、かつての父親のように自分もポンと『ビッグコミック』をテーブルに投げ、それをまた子供たちが自然と読み始めてくれる――。これからも、そういう紡ぎ方をしていただけたら、うれしいですね」

『ビッグコミック』には漫画界のレジェンドたちの重厚な極めつきの一作が満載されている印象があります。

「漫画家さんの代表作になるような一作を描いていただくというのが、『ビックコミック』の編集理念でもあり、コンセプトです。少年誌、青年誌でキャリアを積んできた漫画家さんに、ここ一番の作品を、とお願いしていますし、我々のその想い以上に漫画家さんも、『ビッグコミック』で描くなら、こういう作品を昇華させたい、と意気込んでくださっています。そういった想い、願いを常に双方が共有し、かけがえのない作品を読者に届けたいと思っていますね」

その一方、新進気鋭の漫画家の感性溢れる作品、今の時代の呼吸音が聞こえてくるような刺激的な作品も楽しめます。

「我々の『ビッグコミック』には、〝両輪〟が備わっているんです。その〝片輪〟が、創刊期から本誌を支え続けている、ご存じ『ゴルゴ13』。そして、もうひとつの〝片輪〟には時代を切り取った作品。『正直不動産』や『空母いぶき GREAT GAME』などを読んでいただければ、『ゴルゴ13』という〝片輪〟に負けず、物凄いスピードで回転しているのが理解していただけると思います。時代を敏感に的確に切り取る、ある種の合わせ鏡のような存在でいることがコミック誌の使命であり、ダイナミックな醍醐味です。本誌もその重要性を忘れることなく創刊以来、時代を意識して受け入れ、また時代に遅れることなく並走しながら、ひとつひとつの作品を作り続けてきた自負があります。

振り返ってみると、重厚で普遍的な〝車輪〟である『ゴルゴ13』も、もうひとつの〝車輪〟のように軽やかに時代を切り取っているんですよね。55年の歴史の中で、例えば、オイルショックの時代や旧ソ連、アメリカの冷戦の時代を舞台にし、今はウクライナ侵攻、ITの世界にもゴルゴが絡んでいます。レジェンドコミックと呼ばれている『ゴルゴ13』ですら、今の時代と真摯に向き合い続けている。今後もこの姿勢が読者の共感を広げ、さらに〝両輪〟のスピードを上げ、『ビッグコミック』の勢いは増していくでしょう」

他社との共創は感性の合う作品と刺激し合いながら並走してくれることが理想

これまでにも『ビッグコミック』のキャラクターたちは、他社との共創(タイアップ・コラボ商品開発など)に引っ張りだこでしたが、これからも作品とマッチする企画であれば、積極的に取り組んでいくのでしょうか。

「もちろんです。いろんなお話をお待ちしています。読者層を考えると、大人の嗜好品などに、うちのキャラクターを使うのは全然アリですし。例えば、お酒のラベルにゴルゴを使用するとか。そこにはさほど制約はなく、ゴルゴのキャラクターとしてのルールさえ崩さなければ、問題はありません。ルールといっても、窮屈に考えずにむしろ楽しんでいただけると展開も広がっていくのではないでしょうか。作品を愛してくださっているのなら、大きなボタンの掛け違いはないと思っているので。

それから、さきほどの『ビッグコミック』が家族間で回し読みされている話。家族の日常生活の中に、スッと『ビッグコミック』が入り込んでいる点を踏まえると、うちの作品は白物家電など〝お茶の間〟にある日常的なものと相性はいいんじゃないですかね。加湿器などにうちのキャラクターたちを起用してもらえれば、きっといい仕事をするはず(笑)」

最近の『ビッグコミック』での共創で強いインパクトを受けたのは『BLUE GIANT 』シリーズの一連の展開です。アニメ映画化、映画のサウンドトラックの大ヒット。それを幹として発生していった数々のコラボ商品や心震える音楽イベント。どれも共創の企画の枠を超えて、とびっきりの熱さを感じました。

「『BLUE GIANT』は2013 年に連載がスタート。2016年よりヨーロッパを舞台にした第2部の『BLUE GIANT SUPREME』が始まり、2020年からはアメリカを舞台に第3部の『BLUE GIANT EXPLORER』が読者を楽しませ、もうすぐ第4部がスタートする予定です。今年2月に公開された劇場版は大ヒットを記録し、新たな『ビッグコミック』ファンを生んでいます。

ありがたかったのは、連載が始まった2013年頃、まだ作品の全貌がはっきりとわからなかったのにもかかわらず、すぐに多くの音楽関係者、レコード会社のみなさん、アパレル関係の方たち等が〝この作品は凄くなる〟〝絶対に面白くなる〟と応援してくださったこと。

わかりやすい例として、まさに連載開始直後から公式コンピレーションアルバムがリリースされているんです。担当者の方は、それから今に至るまで熱心に毎回取り組んでくださるんですね。関係者のみなさんは『BLUE GIANT』の魅力を少しでも多くの人にリアルな音として届けたいという想いで突っ走ってくださったと思うんです。そういう熱さは我々にも大きな力として伝わってきますし、結果的に劇場版のサントラがヒットしてくれて嬉しいです。

つまり、『ビックコミック』の〝両輪〟の話に繋がってくるのですが、『BLUE GIANT』の連載当初から応援してくださっていた方々って、作品と一緒に並走してくださっているんです。何らかの形で一連の企画に携わってくださっていますから、その走りからほとばしる熱さのようなものが既存の企画とは違う勢いとして伝わったんでしょう。お互いに並走しながら、刺激や豊かな発想という名のガソリンを与えあい、さらにスピードが増しているといった感じですよね。一連のこの共創はよい形で繋がっていきましたし、ひとつの理想形だと思います。

そういう意味で『ビッグコミック』には、まだまだ魅力的な作品が揃っていますし、新しい作品もどんどん発表していきます。他社さんには『BLUE GIANT』のように、ご自分の感性に合う、お気に入りの作品を見つけ、並走していただき、走りながらお互いにガソリンを分け与えられるような魅力的な関係を築き上げていきたいですね。

我々の『ビッグコミック』は55年の長き歴史がありますが、一緒に走り出してくださった瞬間から新たな歴史が始まるんです」

最後に、編集長の趣味を教えてください。その趣味が編集作業に反映されることはありますか。

「ベタになりますけど、映画かな。新作も旧作も和洋問わずに観ます。マンガ編集者として映画にしろ、小説にしろ、その作品をかみくだいて、武器として備えることは大事なことですから。漫画家さんも映画好きな方が多いですし、次回のクライマックスではこんな感じにしたいね、となった時に、映画のあのシーンみたいに……と提案できれば、すぐに通じ合えますしね。映画は意思疎通を図るうえでよき材料です。

最近は古い邦画、洋画を好んで観ていますね。ドン・シーゲル監督の作品とか。『ダーティハリー』を撮った監督なんですが、彼のような好きな監督の特集上映が名画座で開催されていると〝午前中に1本観てから編集部に出よう〟って思っちゃうんですよね(笑)」

『ビッグコミック』を検索すると、「老舗コミック誌」という表現が使われますが、村上編集長は「老舗」の言葉に潜む古めかしい伝統や重厚さよりも、常に時代の呼吸音に耳を傾け、切り取ろうとする今の嗅覚を大切にした作品を送り出しています。その想いをエンジンに乗せ、これからも『ビッグコミック』の〝両輪〟は熱く走り続けます。

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