フジフイルム スクエア/『チャレンジ ミッケ!』
ターゲットの若い世代だけでなく、幅広い年齢層から反響
2022/11/29
目次
長く愛されている絵本とのコラボ企画で、好評を得た写真展
富士フイルム株式会社の複合型ショールーム、フジフイルム スクエアが、写真絵本『チャレンジ ミッケ!』とコラボした事例をご紹介します。
創業以来、写真文化の発展に貢献してきた富士フイルムが、2007年に六本木・東京ミッドタウンに開館したフジフイルムスクエア。写真が持つ価値を伝える活動の一環として、さまざまな企画写真展を開催しています。
2022年9月23日〜10月13日には、国内創刊30周年を迎えた写真絵本『ミッケ!』シリーズとのコラボレーションで、「『ミッケ!』にはいろう 〜ウォルター・ウィック『チャレンジ ミッケ!』の世界〜」展を開催。会期中は多くの来館者で賑わうとともに、本企画のターゲットであった若い世代の来館が多かった、という大きな成果を収めました。
この写真展を企画した、富士フイルムコーポレートコミュニケーション部 宣伝部 フジフイルム スクエアの舘優人さんに、開催までの経緯や写真展の反響、感想などをお聞きしました。
若い世代の来館を喚起するテーマを考え、『ミッケ!』展を企画
開館以来のべ1,650回に及ぶ写真展を開催(2022年3月時点)しているフジフイルム スクエア。年間25万人を超える人々が写真鑑賞を楽しんでいるギャラリーです。そのフジフイルム スクエアで働く中で「写真展って面白い」と実感していた舘さん。自分の世代である若い世代の来館者をもっと増やしたいと思い、テーマを検討しました。そこで頭に浮かんだのが、自身が子供の頃によく見ていた『ミッケ!』でした。
『ミッケ!』は作者のウォルター・ウィック氏が製作した精巧なジオラマの中に隠されている、おもちゃや模型、ぬいぐるみなどを探す仕掛けのかくれんぼ絵本。シリーズ国内累計956万部突破の人気作品です。
「企画を考えている時、小学生の頃、友達と夢中になって読んでいた『ミッケ!』のことをふと思い出したんです。この本にはいろいろなテーマがあり、それらは全て写真で表現されています。友達とページを開くたびにワクワクしながら探し物を楽しんだ記憶がよみがえってきました。そこで、改めて、『ミッケ!』について調べてみると、作者のウォルターさんは、ページのイメージ絵を描いてから、それに基づき世界中からものを集めて精巧なジオラマを作り、それらを綿密に並べ、写真に撮影して作品にしているということが分かりました。それらの作品は、子どもの絵本という枠を超えていて、ワクワクするようなカラフルな世界を写真で表現していて、大人になった今でも心から面白いと感じたんです」
さらに、現在も根強い人気があることも判明。
「ということは、子どもたちだけでなく、私のように『ミッケ!』に親しんだ若い世代が大人になって、『ミッケ!』の新しい魅力に気づく機会を作れたら、若い世代の人たちの心を動かすことができるのではないか!?と思って企画を社内で提案し、その後、御社にお声をかけさせていただきました」
折しも『ミッケ!』は国内創刊30周年、また作者のウォルター氏が富士フイルムのデジタルカメラを使っていたこともあり、企画はスムーズにスタートしました。
展示のコンセプトは『ミッケ!』の世界への没入体験
今回の写真展では『チャレンジ ミッケ!』の絵本作品から12点を幅3m30cm×高さ約2mの超特大サイズにプリントして展示。描写力の高い富士フイルムの銀写真プリントならではのリアルな質感を活かして、まるで実際に『ミッケ!』の世界に飛び込んだような気持ちになれる写真展になりました。今回の企画を遂行するにのには舘さん自身、ご苦労があったとのこと。
「これまで私が担当した写真展では、写真家さんがもつ展示イメージや、コンセプトをベースにした企画会社が展示という形に作り上げていくスタイルのものでした。しかし今回は、コンセプトなどゼロから自分で考えていく必要があり、私にとってはすべてが初体験であり、チャレンジでした」
舘さんを中心に、小学館の編集者をはじめ、デザイナー、作品の取り付けを行う施工会社、展示プリントの出力全体を管理するプリントアーティストなどが集まって、コンセプトを練り、準備を進めました。そして、「没入感」をコンセプトに巨大プリントで展示しようと決まり、展示レイアウト等進めていくなかで、ネックとなった一つがプリントの色校正。
「写真展においてプリントの色味や質感は命。普段は写真家さんに現場で見てもらい、細かく調整していきます。しかし今回ウォルターさんはアメリカ在住ということで、限られた時間で最高のものを仕上げるために、御社とスケジュールを緊密に調整しながら進めていきました。実際にウォルターさんとの意思疎通がうまくいくかどうかというのも心配の一つでした」
巨大なサイズのプリントをそのまま送るわけにはいかず、小さいサイズで出力したもの全点と、原寸で確認してもらうものとして何作品かは一部を切り取り、1作品は全体を出力した上で細かいスリット状にして、それをロールに巻いて送られたとのことです。
「ウォルターさんからテスト一発目でOKのお返事をいただいたときは、ほっとしました。ウォルターさんはプリントの品質の高さに非常に驚いていたとのことで、スリット状にしたプリントの前で撮った写真をインスタグラムにアップされてもいたので、本当にうれしかったです」
ターゲットの若い世代が多数来館し、幅広い年齢層からの反響も
写真展は予想を超える盛況で、来館者数は30,000人を超えました。タイアップの一環として、小学館の育児メディア『HugKum』で鑑賞体験記事が掲載されたことも人気を後押ししました。
「『HugKum』さんからいただいたレポートでは、PVの数値が非常に高く、ページの滞在時間も長かったので、かなり興味を持って記事をご覧いただいたのだと思います。この記事によって、これまでフジフイルム スクエアにいらしたことが無かった子育て世代の方々にも認知が広がりました」
当初の狙い通り、若い世代の来館者が多く、館内でのアンケートでは役8割が34歳までの若年層だったそうです。子供づれのファミリー層や、若いカップル、若者グループなどが、格段に多く来場されました。
「今回、『ミッケ!』の世界への没入感をより楽しんでいただくために、プリントのほかに展示作品とリンクした立体物展示にも挑戦しました。アルファベットが書かれた立体のブロックを作り、たくさんのブロックが並ぶ作品の前に配置したところ、あたかも作品の中にあるブロックの一つが会場にゴロンと飛び出したような演出となりました。作者のウォルター氏にもご確認いただきながら作り上げたこうした演出の中で、来館した若いカップルの方がブロックに座って熱心に作品を鑑賞したり、写真を撮ったりして楽しまれている姿が非常に印象に残っています」
まさに作品の中に入り込んで鑑賞する、没入体験ができる写真展になったと言えます。
また、会場には立体物として、フジフイルム スクエアのオリジナル『ミッケ!』も展示。「大航海時代にカメラがあったら」というテーマで、昔の帆船や舵輪と、カメラやフイルムをジオラマに仕立てました。
「『ミッケ!』作品の世界観をより豊かに表現したいという思いでコンセプト作りから立体物にするまで試行錯誤しながら制作を進めました。作者のウォルター氏にご提案し、『いいね。この展示がとても楽しみだ』というお返事をいただいたときにはやってよかったと感じました。会場では、連日来館者の方が笑顔でジオラマの写真を撮影されている姿があり、SNS等でジオラマの写真をアップされている方も多く、手ごたえを感じました」
また、会場でウォルターさんへのメッセージを募ったところ3,000件以上が寄せられ、これも予想をはるかに上回る数でした。圧倒的に多かったのは20代と30代ですが、未就学児から70代以上までの幅広い世代から、感想や感動の言葉が寄せられました。
「世代ごとに感想の傾向があったことも興味深い点です。10歳未満ですと『ぜんぶみつけられたよ!』と素直な感想が目立ちました。それより少し上の10代~20代では『小さい頃に友達と一緒に遊んだことを思い出し、その頃に戻ったかのように楽しめました』といった感想、さらにその上になると『自分の子供が小さかった頃に一緒に遊んだことを思い出しました』とか『そのとき遊んだ娘と一緒に来ました』などの感想が多く、幅広い世代の方に愛され、記憶に残る絵本なのだなと改めて思いました。さらにその上の50代60代の方になると『初めて知りました』と。『ミッケ!』の世界に触れてこられなかった方にも、感動していただいたことが分かりました。ターゲットの若年層はもちろん、幅広い年齢層の方々に展示を喜んでいただいたことは本当にうれしく思います」
また、富士フイルム社内でも反響が大きく、社員も家族を連れて訪れていたとのこと。最後に舘さんに、今後の展望をお聞きしました。
「今回の展示では、御社の皆さまをはじめ、本当に多くの方にご協力いただき、助けていただきました。若い世代の方に好評だったのは、『ミッケ!』自体に若年層ファンが多かったことはもちろん、最初に申し上げたように、写真鑑賞の経験がなくても楽しめる展示になったこと、それと、来館者の方が探し物を楽しんだり、そこで写真を撮ったりする能動的な体験ができる展示だったということがあるかなと考えています。こうした学びを活かして、写真の魅力を若い世代の方にももっとお伝えできる展示を今後も企画していきたいです」
数多くの来館者に記憶に残る体験を提供した今回の写真展。世代を超えて長く愛され続けている絵本とのコラボレーションは、写真が持つ力をたくさんの方に再認識していただく機会となりました。
『HugKum』の媒体資料ダウンロードはこちら: