編集長インタビュー 『サライ』三浦一夫編集長

2022/06/29

消費のメインストリームになる世代向け雑誌としてさらなる進化を

鉄道、落語に造詣が深く、CDつきマガジン『落語 昭和の名人』シリーズもにも携わった三浦一夫編集長。1992年の入社以来、『女性セブン』、『小学一年生』、『ビッグコミック』、『テレビサライ』など、様々なジャンルの編集部を経て、2008年に『サライ』編集部へ異動。2019年より現職を務める。

媒体の信頼が築いた、確固たるブランド力は通販でも強さを発揮

1989年に“わが国初、大人の生活誌”として創刊された『サライ』。若者向けの雑誌が主だった時代、画期的な媒体としてデビューしました。

「読者は50代後半から60代前半です。男女比は男性7:女性3ですが、号によっては男性6:女性4になりますね。というのも、『サライ』の人気企画である日本酒、ウイスキー、蕎麦、歴史などに女性が興味をもちはじめ、性差の垣根がなくなってきたことが理由にあるように思います」

読者層は“アクティブ・シニア”と呼ばれ、活動的で自由に使えるお金も多いプチ・リッチ層です。

「持ち家率が高く、資産も多い。最近は50~60代のおひとりさまで可処分所得が多く消費意欲の高い方が多いのも特徴です。その方々が、弊誌に掲載されているなら大丈夫、と高額な商品でも安心して買っていただいているようです。お店さんから『このページと同じものを』と買いに来られた方がいる、メーカーさんから掲載後にすぐ購入された方がいた、とお知らせいただく機会が度々あります」

創刊32年の“サライのブランド力”は安定していて、通販を扱う本誌別冊の『大人の逸品』にもそれは現れています。

「初回から評判が良く、4年目のリピーターも多くいるのが『サライのおせち』企画です。昨年はコロナ禍で帰省できないため、子供から親に贈るケースもあり、販売数が伸びました。『大人の逸品』に掲載する商品でよく売れる価格帯は1万5000円~2万円で、高額な商品もかなり売れています。ロンドン ナショナル・ギャラリー所蔵の『ファン・ゴッホの椅子』の原寸大複製絵画(35万円)は限定10点が完売。高知県の組子細工の壁掛けは107万8000円しましたが、3点ご購入いただきました」

媒体の世界観に惹かれる読者が多いからこその、物販の強さ。そんな信頼ある老舗雑誌にもかかわらず、度々話題になるのは“攻めた”付録です。

「『サライ』を多くの人に知ってもらい、新たな読者を開拓するために付録をつけています。読者がなにを必要としているのかを考え、また付録を通じて日本文化を新しく見せるように企画しています。例えば、『吾輩は猫である』の初版本デをザインしたブックカバーは、文庫を読む人が多いことから考えました。名列車トレインマークトートバッグは若い世代には新鮮だったようで、お父さんが買った『サライ』の付録を娘さんがカワイイと思い使ってくれた場合もあるようですね」

日本の鉄道開業150年にあたる2022年に出版する『日本鉄道大地図館』の編集も手がける三浦編集長らしい視点は、狙い通りでした。

「ですが、雑誌は企画ありきです。ところが、人気の企画である旅行と食は、コロナ禍で取材制限が多く苦慮しました。それでも、写真がきれいで迫力があり、説明はわかりやすく丁寧にという、創刊から一貫しているヴィジュアル誌の矜持があります。京都や奈良という重要なコンテンツは『サライ』らしい内容にすべく、訪れることができなくても文化財に目を向けるとった手法で記事にしました。すぐに旅には出かけられないにしても、家で落ち着いて読める誌面から“いつか行ってみたい”と思っていただけたようで、部数は堅調でしたね」

“最終学年誌”として、本物の日本文化を次世代に繋げる役割を担う

50代後半~がメインである『サライ』の読者は、加齢に伴う体力の衰えなど避けて通れない事柄があります。

「『サライ』は、歳をとることを否定しません。むしろいいことだと考えています。その理由は、最後まで豊かな人生であることを追求しているからですね」

追い求める姿勢は人間の生き方だけでなく、日本文化へも。

「文化や伝統は時代ごとに役割があります。一方で、仏像はいつの時代も人気です。多くの人が仏像と対峙することで救いや対話を求めるのは変わらないからでしょう。職人が作る一点モノも伝統です。歴史的な背景や工程を知り使うことで、物を大切に使う気持ちがおのずと育まれるはずです。そのため、本誌の企画、付録を通じて文化や伝統を伝えるのはもちろんのこと、新たな魅力が伝わる方法を常に模索しています。これにより、若い世代が日本文化に面白いものがあると気づいていただければ、次世代に繋げることができます。『サライ』を通じて、本物を残したいと考えています」

親が読む『サライ』を、ふと子供がページをめくったり付録を使ったりすることで、若い世代に気づきもあるはず。文化の継承を目指せるのは、創刊から愛読し、バックナンバーを保管する熱心な読者がいるからこそです。

「『人生100年時代』といわれているだけに、今後はシニアがマジョリティになります。“最終学年誌”として、人生をより豊かに楽しむ未来を想像できるヒントになる企画の見せ方をしていきたいと考えています」

コロナ禍が転換期となり、新しい読者に合わせ少しずつ変化するも、変わらないのはシニア層が好み、夢中になることを熟知している点。消費のメインストリームになる世代向け唯一の老舗雑誌は、ウェブ『サライ.jp』と連動し、今後のさらなる成長を見込める媒体といえます。

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