目黒区ふるさと納税・佐藤製作所/『コロコロコミック』 コロコロが目黒区の工場で「銀ロウ付け溶接」体験をプロデュース
2024/07/17
目次
都市部の自治体でも有効! 子どもたちに思い出を贈る「体験型」の返礼品
東京都目黒区と同区内で70年近くにわたって金属加工業を営む佐藤製作所が『コロコロコミック』と連携して、ふるさと納税の返礼品を開発した事例を紹介します。
返礼品は佐藤製作所での溶接体験。「銀ロウ付け」という特殊な溶接技術で、『コロコロコミック』監修のロゴ入り真鍮メダルを作る体験教室を2024年6月〜8月に計3回開催。子どもたちの思い出に残る「体験」をプロデュースすることは『コロコロコミック』の得意とするところであり、体験型の返礼品は都市部をはじめ、有力な特産品を持たない自治体でも有効として注目されています。
そこで、佐藤製作所 常務取締役の佐藤修哉さんと、コロコロ版ふるさと納税返礼品の立案者である『コロコロコミック』小林浩一副編集長に、今回の企画の経緯や反響などについてお聞きしました。
『コロコロコミック』流の「ここでしかできない体験」は都会にもあり
2022年より、ふるさと納税の返礼品プランに参画している『コロコロコミック』。これまでに、静岡県沼津市の公園施設「INN THE PARK」のコロコロテント親子宿泊券、同じく沼津市の鉄工所での溶接体験、神奈川県鎌倉市の湘南モノレール1日駅長、沼津市のサッカーチーム「アスルクラロ」のエスコートキッズ、沼津市の3Dプリンターで作るコロコロの人気キャラクターケーキなど、子どもたちが笑顔になるような体験を後押しする企画を提供。好評を博するとともにメディアでも度々取り上げられ、大きな話題を呼びました。こうした取り組みの新たな試みとなったのが、今回のコラボレーションです。
小林「これまで『コロコロコミック』のふるさと納税は、都会に住む家族が地方に出かけて行って楽しむ体験を中心に考えていたんですが、『体験価値』ということで言えば、都会でもできるんじゃないかと。都市部の自治体はふるさと納税により、地方に税金が流出しているという課題を抱えていて、目黒区は2023年度には39億5千万円税収減の見込みだと聞きました。
そういった事情もあり、目黒区役所の方とお話しさせてもらったときに、『小林さん、返礼品はどのように考えるんですか?』と聞かれて、『いや、まぁ、子どもの楽しい体験価値を』って答えたら、『それは東京ではできないんですか』と言われ、『そういうわけじゃないんですけど』と(笑)。体験型の返礼品なら目黒区でもできそうだし、しかも子どもの目線に立っているものは珍しいということで話が前に進み、まず住宅街のイメージが強い目黒区で、子どもたちにどんな体験をしてもらうのがおもしろいかについて相談しました」
その際に目黒区の担当者から、「都会でも溶接体験ができるんですよ」と教えられたのが、東急東横線の学芸大学駅近くの住宅街に工場がある佐藤製作所でした。1958年設立の佐藤製作所は日本有数の金属加工技術を持ち、特に「銀ロウ付け」という、銀を主成分とする合金を溶かして金属を接合させる手作業の溶接技術が強み。航空宇宙関連の機器や医療機器など、精密で加工難易度が高い製品を多く手がけています。その傍ら、ものづくりの技術を普及・継承させる活動に力を入れ、インターンシップやワークショップを実施。2018年から大人向けのロウ付け体験教室を、その後、小学生向けの体験教室も開いています。
佐藤さん「ここは近くに学校があって子どもが多い地域ですし、インターンシップの実績もかなり積み重なってきていたので、近場のお子さん向けにもできるんじゃないかと、大人の教室のあと2、3年して子ども向けの教室もスタートさせたんです。現在は目黒区の中学校からお声がけいただいて、中学生も受け入れています。
教室を始めた理由はまず、銀ロウ付けという溶接技術や金属加工の仕事についての認知度を上げたいということ、そして地域との関わり、交流を深めたいということがありました。また、それまではB to Bという、ただ製作依頼を受けたものをその通りに作るというビジネス1本でやっていたので、ビジネスのチャンネルをもう少し増やしたいなという考えもあり、体験教室を開くことは広告宣伝効果もあっていいんじゃないかと思ったんです」
地方であっても東京であっても、子どもが地域と触れ合うことの意義は同じ
地域との関わりを持ち、子どもに金属加工の技術や仕事を知ってもらうきっかけになればという佐藤製作所の体験教室の理念と、地元産業をPRし、子どもにものづくりの楽しさや魅力を伝えたいという目黒区の理念が、子どもたちの笑顔を作りたいという『コロコロコミック』の理念と合致。佐藤さんと目黒区の担当者、小林副編集長の3者打ち合わせに際し、ふるさと納税返礼品の開発はほぼ即決で、やりましょうということになりました。
小林「そもそも『コロコロコミック』がふるさと納税に関わってきたのは、子どもたちの笑顔を作る、ということに加え、地域の魅力を伝えるお手伝いがしたいという思いがありました。子どもが地域と触れ合うことの意義というのは、地方でも東京でもおそらく普遍的なものだし、そこに行かなければないものといえば、学芸大の住宅街にある工場は都会では貴重な存在です。それに実際に佐藤製作所さんに伺ってみて、ここはきちんと経営戦略を考えている優秀な会社だなと感じました。若い女性が働いていて、東京都の女性活躍推進大賞にも選ばれているんですよ。こういうところなら、ぜひ組んでやりたいと思いました」
佐藤さん「目黒区のほうからお話をいただいたときはちょっと驚いたんですが、『コロコロコミック』のような知名度の高いところとコラボレーションできるとなると、会社としてものすごくPR効果があります。それにコロコロさんのブランド力で、我々が『うちの技術ってすごいんだぜ』っていうよりもずっと箔が付くというか、しっかりした会社なんだなと世の中的に見てもらえる効果が高い。これまでの体験教室の取り組みが、こうしたコラボに繋がってよかったです」
体験教室で子どもたちにどんなものを作ってもらうかについては、最初の段階でざっくりしたプランだけを共有し、具体的には佐藤製作所が考案しました。
佐藤さん「子どもだからそんなに難しいものは作れないし、時間もあまり長くはかけられない。また原価がすごくかかるものもできない。制約は結構ありましたが、社内に『コロコロコミック』の愛読者の若いスタッフが二人いて、彼らが中心になって考案してくれました。小林さんのほうから、どういったものがコロコロ世代の子どもたちに刺さるか、というヒントをいただいていたので、それをベースに考えたのが今回のメダルです」
小林「こちらからは、コロコロ読者の嗜好と、なるべくシンプルなものがいいよというお話をさせていただきました。作業には集中力が必要ですし、小学生の子どもにできることは限られる。ちょこっと溶接して鉄と鉄がくっついたっていう体験ができればそれでいいと。子どもにとっては、あくまでも『自分が溶接した』という体験が大事ですから。あと、子どもたちに響くものとして、『コロコロコミック』公式の銀ロウメタリスト認定書も作りました」
デモンストレーションの体験会に多数のメディア取材が入り、反響は上々
体験教室の開催に先駆け、2024年3月に発表記者会見とデモンストレーションの体験会を実施。青木英二目黒区長も参加し、メディアの取材が多数入って、日本経済新聞や東京新聞、溶接ニュース、目黒区民ニュースなどに掲載されました。
佐藤さん「メディアに取り上げられたことは大きかったですね。実際に『新聞を見て参加申し込みをしました』という方もいらっしゃいますし、反響は上々で、第1回目の体験教室はすぐに定員が埋まりました。弊社としてはそんなに大々的に告知したわけではないので、メディアの力というのはやはり大きいなと感じました」
小林「コロコロのふるさと納税プランは、これまでもメディアから取材を受けることが多かったんですが、今回は特に、日本でも有数の技術を持つ工場が、目黒区のほぼ中央に位置する場所にあり、そこで溶接体験できることが、驚きを持って捉えられたようです。体験会の様子については、登録者数67万人のYouTubeコロコロチャンネルでも紹介しました」
第1回目の体験教室は6月22日に開催され、定員4名のうち男子が3名、女子が1名。若いスタッフがマンツーマンで丁寧に指導する銀ロウ溶接で、メダルを完成させました。
佐藤さん「スタッフはこれまでの弊社の体験教室で指導に慣れているので、子どもへの教え方は優れていると思います。お子さんたちは皆楽しんでいる様子でしたが、ついていらした親御さんのほうがより楽しんでいらしたんじゃないかなと(笑)。親御さんも溶接に興味があったようですし、自分の子どもが楽しんでいる姿を見るのは親として嬉しいですからね」
体験後のアンケートでも、子どもたちからは「すごく楽しかった!」という声が並び、保護者からは「銀ロウ付けというなかなか体験できないことができてよかった」「普段入ることのできない製作所の雰囲気を感じながら本格的な体験ができた。ぜひ続けていただきたい」といったコメントが記されて、親子ともども満足してもらえたことが伺えます。参加者に好評だった今回のコラボレーション。最後に、その感想と今後の展望をお聞きしました。
佐藤さん「参加者の子どもさんにも親御さんにも、楽しんでもらえてよかったです。体験教室はどうしてもスタッフに負担をかけてしまうので、回数はそんなに増やせませんが、『コロコロコミック』とのコラボレーション第2弾なら、ぜひやりたいですね。こうしたお声がけがいただける活動をこれからも続けていきたいと思っています」
小林「都市部の自治体のふるさと納税プランは、今回初めて手掛けましたが、都会でもいい体験ができるということがよくわかりました。取り上げ方としては、佐藤製作所さんの銀ロウ付け溶接のような、希少な技術にスポットを当ててもいいし、その地域の歴史をたどってみるようなことでもいい。知恵を絞れば、東京に憧れを持っている人が地方からやって来るようなものもできるんじゃないかと思っています。今回、目黒区のケースが形になったので、都市部のふるさと納税プランも広げていきたいですね」
モノ消費よりコト消費のほうが付加価値がつけやすく、楽しくてちょっとした意義のある体験は、ふるさと納税の返礼品としても有効ということを示した今回のコラボレーション。コロコロ版のふるさと納税に都市部の自治体での実績がプラスされ、これからも新しいプランが続々生まれそうです。
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