新しいビジネスに向けて優良なコミュニティづくりも進めていきたい。
『美的.com』小林由佳編集長インタビュー
2023/02/07
新しいことにもフレキシブルに取り組んで、可能性を拡げていきたいです
小林由佳編集長は実用系出版社を経て、2015年に小学館に入社。広告局に配属され、デジタル担当として『美的』をはじめ、女性誌全般のデジタル広告セールスや、各媒体のWEB戦略などのマネタイズに携わる。『美的.com』、『Precious.jp』などの媒体担当、2年間の『美的』編集部兼務を経て、2022年10月に『美的.com』編集長に就任。
マスな読者と美容熱心な読者の双方を見据えた記事作り
美容誌実売No. 1の『美的』が発信する美容情報WEBサイト『美的.com』。配信頻度は1日15本程度で、ほぼ半数がオリジナル記事です。読者のボリュームゾーンは25〜44歳と、メインターゲットは本誌とほぼ同じですが、読者層にはWEBならではの面もあります。
「ひと言でいうとWEBは読者が『広い』んです。それは数字でもあきらかで、本誌の読者が10万人としたら、『美的.com』はユーザー数が月500万UUになったりしますから。その中に本誌の読者が含まれていることは、読者アンケートの『美的.comも見ている』という回答からわかっていますが、一方で、本誌は買ったことがないけど、情報を『美的.com』で得ているユーザーも多いようです。読者がマスになることで、あたるコンテンツが少々違ってきたりするので、オリジナル記事はそういう点を加味して作ることもあります」
特によく読まれているのは、スキンケアやメイク用品の限定品情報。美容誌だからこそ入手できる情報には、やはり読者の反応が大きいといいます。またWEBの特徴として、ヘルスケア系の記事やヘア関連の記事の人気が高いとのこと。
「ヘルスケア系が人気なのは、読者がマスであることが影響しているかもしれません。ヘア関連は、皆さん、WEBで髪型やヘアカラーを探したりするので、よく読まれるんですね。WEBとヘア関連は親和性が高いと思うので、ヘアの記事はかなり多めに出しています」
タイアップで読者の注目度が高いのは、まず、商品の成分などをきちんと紹介する手法です。
「『美的』の本誌は本当に読者が知的で美容熱心で、情報も真面目にとりにいくという感じですけど、WEBもやはり同様です。化粧品の成分の話なんて非常に難しくて、私たちでも理解するのが大変なこともあるんですが、読者がこれを読んでくれるのかなと思うくらい詳細な成分解説のPVがすごくよかったりとか。やっぱり真面目な読者というか、ここまで商品のことがわからないと納得できないのかも、と思いますね。そういう読者を抱えている以上、ブランドさんが新製品発表会で私たちへ説明くださるような成分解説なんかをきっちり押さえたタイアップというのは、私たちが得意とする手法として、これからも続けていきたいと考えています」
もう一つ、人気の美容家を起用したタイアップも、訴求力の大きいコンテンツです。
「読者は美容家さんからの情報を信頼しているんですね。それも自分と同世代の若い美容家さんよりも、ひと回りくらい年上の美容家さんのほうが信頼度が高い。自分もそういうふうになりたいから、その人がしていることを知りたいという心理でしょうけど、読者は結構シビアだなと(笑)。それでクライアントさんからも美容家さん起用の要望が多いんですが、人気の美容家さんは皆さんお忙しいし、ご自身の美のポリシーをお持ちなので、なかなか一筋縄にもいかなくて。苦労することも多いですが、マッチしたときの記事の説得力は最強なので、そこはがんばってやっていきたいと思っています」
またWEBの特徴として、美容以外のライフスタイル商材のタイアップがヒットすることも多いとのこと。
「例えば機能性下着のタイアップでは、商品画像がLINEで想定の2倍以上クリックされてWEBサイトに流入があったのですが、そういうことは結構ありますね。万人に向けたライフスタイル商材は、読者がマスだから、マスなユーザーに届けているからこその人気ジャンルなのかなと思います」
さまざまな新しい取り組みへのチャレンジで、媒体をより魅力的に
タイアップでは次々に新しい取り組みも行っており、着実に成果を上げています。その一つがLIVEコマースで、もともとイベントやLIVE配信は『美的』が非常に得意な分野です。
「コロナ禍でLIVE配信のスキルが磨かれて、今ではいつでもフレキシブルに配信できるようになっていますが、LIVEコマースは前々からやってみたかったことなんです。というのは、私たちがおすすめした商品がこんなに買ってもらえましたって、クライアントさんに戻せるじゃないですが。それは自分の首を絞めることでもあるんですけど(笑)、すごくやりがいがあるなと思って。実際に何回かやってみてわかったのは、売れるのは『美的』オリジナルの商品なんだということ。数を大量に売るというよりは、『美的』限定のオリジナルセットを売り切ることを目標に実施したところ、すぐに完売しました。『美的』のお墨付きがちゃんと売れましたという取り組みが、ブランドさんとご一緒できるのはおもしろいと思うので、これからもやっていきたいですね」
また、InstagramなどのSNS単体でのタイアップメニューもスタートさせています。
「これまでSNSはWEBサイトに誘導するためのものというような位置付けだったんですが、読者が一番よく見ているのがSNSですし、とくに新製品情報は読者がもうSNSでしかとってないなというのをすごく感じているので、SNS単体で完結するメニューを増やしていこうと。Instagramは今52万人くらいフォロワーがいるので、そこがうまくマネタイズできたらいいなと思っています。Insta LIVEはすごく人気なので、それもSNS単体でのマネタイズの成功例みたいな感じはありますね」
そのほかリール動画の強化も力を入れていく部分であり、今後TikTokも始める予定です。
「読者が接点を持っているSNSには存在していないと、というのがあって、TikTokは無視できないと思っています。それと今、VRにもチャレンジを始めていて、クライアントさんとVR空間を作っています。VRの中で美容の何ができるのかというのを模索しながらやっているところですが、時世の要請もあり、やっていかなくてはいけないことですね」
こうした新たなチャレンジとともに、今後の展望として、媒体のコミュニティをつくっていくることも考えています。
「今メルマガ会員みたいな感じで、小学館の各媒体にID会員っていう、いわばコミュニティがあるんです。そこにLIVEコマースに参加してくれた人とか、オリジナル商品を買ってくれた人とか、『美的』を信用して『美的』がいいというものを買ってくれるユーザーを確保しておきたいなと思っています。ある程度の人数が集まれば、これくらい情報を流したらこれくらいモノが売れるかもしれないというような肌感覚がつかめるので、いろんな新しいビジネスができるんじゃないかと思うんです。ですので、優良なコミュニティづくりも今後の課題です」
プライベートでは、先輩に誘われて始めたゴルフにハマっているという小林編集長。忙しくてなかなか練習に行けず、成績は伸び悩み気味ですが、リフレッシュがてらしっかりやりたいとのこと。週末の気分転換はサウナで、近頃は美容好きの女性の間にも「サウナー」が増えていることを知り、うれしく思っているそうです(『美的』3月号サウナ特集もぜひご覧ください!)。ゴルフとサウナでいい汗を流して英気を養い、「美的ブランド」をさらに拡げるべく意欲を燃やしています。
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