小中学生の女の子が居心地よく滞在できるサイトから、新しいヒットを生み出します。『ちゃおプラス』藤谷小江子編集長インタビュー
2024/04/15
どんな女の子にも引っかかるフックを作るのが上手な『ちゃお』の強みを生かします
藤谷小江子編集長は2003年に入社し、『DIME』に配属。漫画誌の編集に携わりたいと思いつつ、デジタル家電に詳しかったため、同誌との相性もよく約8年間在籍。その後、念願かなって2010年、少女漫画誌『Sho-Comi』に異動。第2子出産後、職場復帰して2015年に『ちゃお』へ。2019年、編集長に就任し、2023年『ちゃおプラス』を立ち上げ、編集長に。
漫画、記事、動画を横断的に回遊できる総合エンタメサイト
2023年12月にオープンしたデジタル新サービス『ちゃおプラス』。小学生女子向け漫画誌No.1の『ちゃお』の公式サイト『ちゃおランド』と無料漫画サイト『ちゃおコミ』を統合し、YouTube『ちゃおチャンネル』のコンテンツも組み込んだ、漫画も記事も動画も楽しめる総合エンタメサイトです。ユーザーのメインターゲットは、小中学生の女子で、『ちゃお』本誌の読者より高い年齢層も取り込む内容になっています。
「これまで『ちゃお』は読者ターゲットをある程度年齢で区切っていて、その年齢を超えると読者を追いかけなかったんです。小学校を卒業するタイミングで『ちゃお』も卒業していくのが自然だよねという感じで。でも、『ちゃおプラス』は読者を追いかけようと思っています。今は書店さんが少なくなって、紙の媒体に出会わないままの子が増えました。小学生になったら本屋さんに行ってみて、自分の年齢や興味に合う雑誌を選ぶという文化が失われてきている。それなら、スマホを手にした子どもが、生まれて初めて漫画や記事に出会う場所を WEBに作ってしまおうと。そして、そのまま中学生になっても読み続けられるコンテンツも入れて居心地の良い場所から卒業させないつもりです。
『ちゃお』はもともと女の子の目線で作られた総合エンタメ誌。どんな女の子にも引っかかるフックを作るのが上手なんです。その強みを生かして、小学生から中学生くらいの女の子がふらっと来てみたら、『あれ、ここ私にぴったりだな』と思えるサイトを目指しています」
漫画だけでなく、『ちゃお』の強みでもあるグラビアや実用記事、動画を横断的に楽しめるようにし、ユーザーが長く滞在、回遊できるようなサイト設計にしています。
「今はみんな目的型で、SNSで記事とかがバズっても、サイトでその記事だけを見て40秒くらいでしゅっといなくなるんですよ。それって記事サイトとしては一見数字が取れていいようですが、媒体としてはあまりよくないと思うんですね。それより子どもにとって居心地のいい『ちゃおプラス』という場所でずっと遊んでもらうほうが、将来的にはヒット作品や話題になる企画、タイアップでも効果の高いものが生まれると考えています。サイトに来たら少しでも長く回遊してもらうようにすることが、サイト設計の最大のテーマです」
2024年2月現在でユーザー数は1日2〜3万。そのうち1万5千人はほぼ毎日来てくれる固定ユーザーで、平均滞在時間は約10分。小中学生のサイト滞在時間としてはかなり長く、狙い通りの方向に進んでいると言えますが、もちろんそのための様々な工夫があります。
「記事は子どもの関心が高そうなキーワードでタグ検索できて、その関連の記事がどんどん出てくるようになっています。もともと『ちゃお』は実用記事がかなり充実しているんですが、それを『ちゃおプラス』に蓄積することで、ユーザーが読みたい記事をいつでも読めて、関連する記事もたどれる。漫画も好きな作品と似たようなテイストの漫画がカンタンに見つけ出せるように編成を考えています。また、動画はすべてサイトの中で記事の形にして、YouTubeに行きっぱなしではなく、サイトに戻って回遊できるようになっています」
漫画も記事も必ず毎日4〜5本は配信し、Today’sという項目でその日の配信が全て見られるのも大きな特徴。漫画はオリジナル作品もあれば、『ちゃお』の掲載作品もあります。
「WEBなのでオリジナル作品は自由で元気です。たとえば、いま人気の東村アキコ先生の『まるさんかくしかく+』は子どもだけでなく、大人も楽しめる作品。東村先生はたくさんメディア化されていますが、女児向け媒体は初めてです。ただ、どの作品も『ちゃお』なので、エロティックなものや過激なものではないようにしています。また、少女漫画ではなかなかできなかった男子が主人公も漫画もあり、こちらも人気です。作家さんにも自由な気持ちで描いていただいて、そこから新しいヒットが出るといいなと思っています」
記事のほうも「お姉さん向け」の要素をかなり取り入れているとのこと。
「少しお姉さん向けにするほうが子どもは居心地がいいんです。子どもは大人のものに憧れますし、ヒットするものやトレンドは上から流れてくる。サイトのターゲットは小中学生ですが、全体にあえて中学生向けの雰囲気で作っています。エンタメ記事では男性アイドルやVチューバーなどを多く取り上げて、実用記事もメイクアップなどのファッション&ビューティーを積極的にやっています」
消費行動につながる提案でタイアップの訴求力を上げていきたい
タイアップとしては従来のホビーに加え、雑貨も子どもへのアピール力が強いと言います。
「以前『ちゃお』のアンケートで欲しいものの1位が座椅子だったんですが、それは家の中で自分の『居場所』をかわいくしたいから。お小遣いで買える雑貨で自分の学習机をかわいらしくする記事なんかも人気です。子どもにとって、親に与えられた部屋で自分が選んだわけでもない家具がある中、机周りだけは自分の自由にできる空間なんですね。ペンポーチの中身というのもそうで、それはその子にとって自分の作り上げる空間だから大事にしたい。
好きなものを手に入れて自分の世界を作り上げる欲望こそが、私は消費行動のキモだと思っているんです。だから、どうやったら自分の部屋やペンポーチの中身がかわいくなるかといった提案をどんどんしていきたいです。それをしっかりやっていくことが、雑誌が今までやってきたライフスタイルの提案だと思うし、その提案こそがクライアントさんに喜ばれる部分だと考えています」
また今、力を入れてやろうとしている「ちゃおプラス保健室」というコーナーで、衛生用品などのタイアップもできればと考えています。
「目薬や制汗剤、生理用品、コンタクトレンズなどは、子どもが最初に出会ったブランドをその後も使い続けることが多いと思うんですが、たとえば生理用品でも親が使っているものを使うのではなく、もっとかわいいものが欲しいのかもしれないし、目薬だって好きなデザインのものを使いたい。そこに記事が入り込む余地があると思っています。目薬なら、『夕方、好きな人に会うのに目が充血してる。どうする?』という記事に『充血解消ランキング』を設け、そこで紹介してもいいですし。
人がランキングを好きなのはなぜこれを買うといいかを安心したいからで、『ちゃおプラス』なりの、これを使うといいよというのをやっていきたいです。WEBは文字数の制限がないので提案がしやすいですし、5週連続の企画なんかもやりやすい。初めてのコンタクトとか初めての美容といった企画で、5回のうちの1回をタイアップで買っていただくということもできます」
ファッションのタイアップもWEBならではの利点を活かして訴求力を強めたいとのこと。
「漫画の主人公にブランドの服を着せるタイアップを雑誌で結構やってきたんですが、 WEBはカラーを自由に使えるので、モノクロの漫画で主人公が着替えたシーンだけをパッとカラーにして、注目度を上げることもできます。それでそこをクリックすると記事に飛んで、その商品を紹介するとか。WEBは新商品もすぐに紹介できますし、コーディネートの提案をするのも楽しそうです。いかにうまく提案して子どもたちに憧れさせるか、ですね」
課金サービスの会員登録で、ユーザーの属性がよりクリアに
『ちゃおプラス』は2024年4月24日に課金サービスを開始。クレジットカードで課金できるシステムですが、無料の会員登録をすることでより多くの漫画が読める仕組みです。
「非会員でも読める完全無料の作品もありますが、会員登録すれば無料で読める漫画が増え、またログインボーナスポイントなどがもらえて、ポイントを使って漫画を読むこともできます。課金限定の漫画も中にはあるんですけど、基本的にはポイントでたくさん漫画が読めるようなイメージですね。ボーナスポイントは本誌の読者やイベントに来た子にもあげて、会員を増やしていきます。会員登録で何歳の子が何時くらいにサイトに来て何を読んでいるのかがわかるようになるので、一層マーケティングがしやすくなりますし、データをもとにクライアントさんとタイアッププランを練ることもできると思います」
今後は、オーディションで選ばれた専属モデル「ちゃおガール」をアイドル的に育てていくことや、子どもに人気のVチューバーの記事や漫画を増やすことも考えています。そして何より、小中学生くらいの女の子のWEBでの居場所をより魅力的にしていきたいとのこと。
「『ちゃおプラス』のサイトデザインは、くすみカラーのブルーとピンクを基調にした、ちょっと部屋っぽい作りにしていて、カーソルは『ちゃお』読者の好きなフルーツ1位のいちご。そうしたことも含め、居心地よく、『ここに来ると私向けの情報があって、漫画がたくさん読めて、イケメンアイドルが見られて、いっぱい楽しいワクワクがあるな』と思ってもらえる場所を作ることが『ちゃおプラス』の最大の強みになると思っています」
趣味は文房具を見て回ることとパン作りという藤谷編集長。大の文房具好きで『DIME』在籍中も文房具を担当。今も毎週のように日本橋の丸善などの大型文具店に行ってはチェックしています。昨年のヒットはぺんてるの「マットホップ」というペンで、これまでにない不透明なマットカラーがすごくかわいいと、新発売されたときに即購入。また、週末のパン作りがストレス解消に大いに役立っているそう。そんな藤谷編集長が『ちゃおプラス』にかわいいものをどんどん取り込みながら、サイトをじっくり大きく育てていきます。
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