企業さんと読者との距離を縮めていけるようなタイアップを目指しています。
『小学一年生』明石修一編集長インタビュー
2024/03/22
認知度を活かした全世代向けブランドコラボ企画も積極的に進めていきたい
明石修一編集長は1995年に小学館に入社。広告部に配属され、雑誌進行業務を担当。5年後、『小学五・六年生』編集部へ異動。以後、『小学四年生』『小学三年生』を経験し、『幼稚園』『てれびくん』の幼児誌へ。2011年に再び学年誌セクションへ異動し、創刊まもない『読売KODOMO新聞』とキャラクター増刊、ゲーム攻略本の企画室を兼任。その後、ポケモン専門ホビー誌『ポケモンファン』にも携わり、『小学二年生』に異動。2017年、小学生全学年対象の『小学8年生』創刊に立ち会い、再び『読売KODOMO新聞』を兼任後、2024年1月より『小学一年生』編集長に就任。
本誌を読んで知る、付録を作って遊ぶことで、「非認知能力」が育まれる
大正14年創刊の『小学一年生』。小学校入学という人生の貴重なライフタイムにある子どもと、その保護者層を応援する唯一無二の媒体として、長年支持されています。2023年より、4月号には保護者向けの別冊付録もつき、発行部数を大幅に増やして対応するほどの人気で、祖父母から孫への定期購読ギフト需要が多いのも特徴です。
「4月号においては、小学校がどんなところか知りたい、学校生活や勉強に対する不安を解消したい、という親子のはっきりしたニーズがあります。別冊付録では、お子さんが小学校生活を送るにあたってどういうことに気をつけてあげたらいいか、どんな準備をしたらいいかなどのアドバイスを、小学校の先生や専門家に聞いて特集しています。こうした情報はやはり需要が大きく、次号以降も本誌の巻末に保護者向け記事を載せる予定です」
読者のお子さんはいろいろなことを見たい・知りたい・やってみたい! という興味関心があり、保護者の方は、学校の勉強では得られない知的好奇心を広げる・掘り下げる学びによって、お子さんの個性が育まれることを望んでいると感じているそうです。
「最近注目されている『非認知能力』は、勉強とは異なる数値化されない能力で、周囲への思いやりやコミュニケーション、また探究心や好奇心など、いわゆる人格形成のベースをつくり上げるものです。そういったその子が持つ本来の個性を、様々な形で拓くことが『小学一年生』に期待されていると思うんですが、これは学年誌がこれまでの本作りにおいてずっと取り組んできたことです。子どもに対する小学館の伝統的な理念が『種を蒔く』で、種を蒔いて水をあげて芽が出るのを促す。僕ら編集者が、子どもたちに雑誌の付録や特集をいろいろ提供することにより、子どもたちの中で自然と育まれるものが、非認知能力に繋がっていくと考えています。
一時期、インターネット社会の発展により、雑誌媒体が古いメディアとして衰退するのでは? とも言われましたが、PCやネット環境だけで子どもの健全な人格形成ができるのかという危機感が世論に生じてきました。今では子どもたちを正しく導く選択肢として、児童雑誌の役割が求められていることを実感しています」
保護者へのアンケートを見ると、まず「学校での勉強にちゃんとついていけるか」という不安があるのは当然のこととして、その次に多いのが「学校で友達や先生とうまくやっていけるだろうか」というコミュニケーションに関する不安だと言います。
「それは昔からあったと思うんですが、最近は対人対面の機会そのものが失われてきています。ごく幼い頃からネットで動画を見たりゲームをしたり。僕自身もゲームが大好きだったので否定的な気持ちは全くないんですが、それ自体は悪いことではないにしても、やはり小さいうちから他者とコミュニケーションをとる機会が減っていて、保護者の方もそうしたことに対する危機感を持っておられるようです。雑誌の記事や付録はコミュニケーションのきっかけにもなり、内容について家族と話したり質問したり、また学校で『こんなおもしろい話があるんだけど知ってる?』みたいな感じで話題にしてもらうことでコミュニケーションが広がって上達し、友達同士や先生とのつきあいもうまくいくんじゃないかなと思います」
子どもの関心や好奇心を膨らませるタイアップを進めていきたい
これまで主流だった子ども向け玩具の広告に加え、近年増えているのが自社商品やサービスの啓蒙、事業のメッセージ、将来的な消費者獲得のための投資としてのタイアップです。
「セブンイレブンのレジ付録(2023年11月号)は反響が大きく、マスメディアからの問い合わせや取材も多くて、ネットでも話題になりました。非常に発信力のある付録だったと思っています。その際に実感したのが、身近にありながら子どもが本来体験、操作できないものが興味関心をひくんだなということ。『幼稚園』の付録で人気の自販機や銀行のATM、JRの改札機などもそうしたカテゴリーに入りますが、『小学一年生』でも本物に近い体験ができる付録や、小一モデルを使った現場取材の特集記事、お仕事体験の企画など、企業と読者の距離を縮められるようなタイアップが進められればと思っています。
最近は家やビルが建つのもすごく早いので、ツーバイフォー工法の家モデル付録を付けるとか、太陽電池を使ったEVミニカーを付録にするのもおもしろそうです。とにかく関心や好奇心が膨らまないと将来的な消費行動にも結びつかないと思うので、企業の皆さんには子どもたちとの結びつきをどんどん太くしてほしいですし、それぞれの企業の商品なりサービスなりを、うまく学びに繋がる形にするのが理想です」
業種ジャンルとして、子どもにアピールしやすいのは「食」関係とのこと。
「読者アンケートでは『学校で一番楽しみにしているのは給食!』という声が多く、食は子どもにとって最も身近な関心ごとだと思うので、食関係のタイアップは、商品にしろ外食チェーンにしろ、やってみたいですね。自分が普段食べているものがどうやってできるかを知ると、そのものに対する関心が大きく高まります。これはこういうものからできているんだなとか、生産者の顔が見えてくるとか、想像力を働かせて食べられるようになるので、おいしくいただこうという気持ちになる。
お子さんと保護者の方が一緒に買い物へ行く体験をするだけでも意識が違ってくると思うんですが、最近は売り手の顔が見えないこともあります。料理でもすでにできているものがポンと用意されたりして、それはそれで便利な部分もあるけれど、食べ物への想像力がどうしても働きにくくなってしまいます。そうすると食への関心も低下してしまうので、想像力を働かせるための学びはやはり必要です。企業の方も、子どもにちゃんと伝えたいと考えておられると思うんですけど、じゃあどうすればいいかとなると、なかなかノウハウがない。そこをうまくお手伝いできればと」
付録のコラボでは本誌で関連記事も展開し、訴求力が強いタイアップができます。
「付録は学年誌の軸なので、付録をベースにした企画はやはり大きくアピールできますね。基本的に付録はただ付けっぱなしということはなく、僕らは『関連学習』と言っていますが、そのモノやサービスを使うことでどんな効果があるのかとか、それに関するものを調べてみようとか、そうした記事を付帯しています。子どもが興味を持って自分から知りたくなるようなメッセージを届けることが大切で、それは僕ら編集者の役割だと思っています」
ちなみに学年誌の付録は、完成品が多かった時代を経て、今また紙の組み立て付録の良さが見直されているとのこと。
「紙を平面から立体にする、組み立て付録の魔法のような仕掛けと工夫は、今の子どもたちにも十分アピールできるもので、それは昨今の話題の付録からも見てとれます。セブンイレブンのレジ付録のような紙の組み立てと成形品や電子パーツを組み合わせたものは、いわば進化したハイブリット付録ですね。紙の組み立て付録のプロセスは、最近盛んに言われるプログラミング学習に繋がりますし、自分が作ったんだという達成感も得られて、そのモノへの愛着もわきます」
タイアップでは、『小学8年生』や『読売KODOMO新聞』、小学館の育児WEBメディア『HugKum』と連携して、幅広い読者層にリーチすることも可能。『HugKum』と連携したオンラインセミナーは盛況でした。そして今後の展望としては、圧倒的な認知度を活かした全世代向けブランドコラボ企画を、これまで以上に積極的に進めていきたいとのこと。
「『小学一年生』は2025年に100周年を迎えます。そうしたタイミングもあり、『小学一年生』を新しいことにチャレンジする、新しい世界の扉を開ける象徴として、いろんなプロジェクトでオープンにしたいと思っています。日本全国で認知されているブランドとロゴを活かし、『○○一年生』として様々なジャンルや商品名を頭につけて、キャンペーンを打つ、パッケージプランを作るなどの企画を推し進めたいですね。
これまでの実績から『小学一年生』ブランドは、「初心者」とか「デビュー」とか、新しいスタート感があるキーワードにすごくよくマッチすることがわかっていますし、難しいことでもシンプルに見えて、わかりやすさに繋がります。例えば介護なんかでも、『介護でまず取り組むべきQ&A』とか言うと固く捉えてしまいますが、『介護一年生』だと軽くなる。『○○一年生』で子どもも大人も、一から新しいことを知る、チャレンジする機運を盛り上げたいと考えています」
洋楽のロック好きでライブにもよく行くという明石編集長。『ライブ一年生』として、子どもフェスができたらいいなぁと夢見ているそうです。野外フェスに親子連れで来る人や家族連れが多いフェスはあるけれど、子どもを対象にしたフェスはまだない。バンドが、子どもたちが相手であることを意識して演奏したり、MCをやったりすれば、いい空間ができそうな気がするし、絵本の読み聞かせなどもバックバンドをつけてやったらかっこいいのでは!? ある意味、平和な日本でしかできないフェスではないか、と考えているとのこと。自身も新しいチャレンジに前向きな明石編集長が『小学一年生』の世界をより楽しく、充実させていきます。