高単価商材マーケティングの最新トレンド
新たなターゲット層「サイレントリッチ」とは

2023/10/19

今を愉しむ〝富裕層の大人たち〟へおくるタブロイドマガジン『AdvancedTime』編集部が、2023年10月5日(木)、最新マーケティングトレンドのウェビナーを開催。現状の富裕層マーケティングの課題から、新しいターゲット層「サイレントリッチ」の特性、そのインサイトと生活スタイルを踏まえた最適なアプローチ方法まで、高単価商材の広告提案に役立つ情報を集約したウェビナーの内容をご紹介します。

世界のハイクラス・ライフスタイルに関して造詣が深いライフスタイル・モータージャーナリストの九島辰也氏を交え、日本の富裕層のリアルな消費動向を紹介。新しいターゲット層「サイレントリッチ」が浮かび上がるトークセッションとなった

新規ターゲットの開拓には、新しいアプローチ手法が必要

『AdvancedTime』は発行部数20万部(公称)、基本年4回発行のタブロイド判フリーマガジン。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、中日新聞の4紙に同梱し、東京、名古屋、大阪、神戸の富裕層が住むエリアをセグメントして配布しています。今回のウェビナーは、その会員組織「AdvancedClub」1万7000人から厳選した1200名への大規模アンケートをもとに、高単価素材の新たなターゲット層「サイレントリッチ」を可視化、広告戦略を考えました。

登壇者は、高単価商材のプロモーションに造詣の深いライフスタイル・モータージャーナリストの九島辰也氏、『AdvancedTime』の井亀真紀編集長、神山敦行発行人の3名です。

まずは、世界のハイクラス・ライフスタイルに関して豊富な取材経験を持つ九島氏に、富裕層のリアルを語っていただき、現状のマーケティングの課題を検証しました。

「富裕層の世界では、車が車だけじゃなくて、ファッションだったり、行く場所だったり、所有している船だったりと、いろんなものがみんな繋がっている。その横櫛で切れるメディアがなかなかないなというのは、ずっと思っているところですね」(九島)

「車というとメンズのジャンルと思われるかもしれないですけど、富裕層がファミリーで活動することを考えると、ワイフの目もあるだろうし、あるいは家族という価値観を大事にしている層なので、ハイエンドのクラシックカーもいわば一族の資産みたいなもの。個人にお金があるというより家とかファミリーにお金があるんです。今までのメディアは男女や世代、趣味性で切るという感じで、雑誌がコアな個人ターゲットに向かって専門性を高めていくようになっていますが、そうすると、そこから漏れる富裕なファミリーというのはじつは多いんじゃないかと。それが、我々の考える『サイレントリッチ』なんですね」(神山)

「『AdvancedTime』は2019年の創刊ですが、これまでやってきて、派手な新興リッチではないお金持ちって、特に日本においては姿が見えにくいものだと感じています。見えざる富裕層、見せざる富裕層ですね」(井亀)

現状の富裕層マーケティングの課題を要約すると、新規のターゲット開拓が難しいこと、これまでの施策設計では意図した層へメッセージが届いているのか不確かなこと、新規ターゲット層の発見と新しいアプローチ手法のどちらもが不足していること となります。

「富裕層マーケットを、今までのように年収やファッションの趣味嗜好で切るだけでは掴みきれないものがある。新規ターゲットの開拓が難しいのは、メディアに触れながら消費を楽しむアクティブな新興リッチ層とは違い、『サイレントリッチ』層はいわば保守的で、自分が信用しているものには多額の投資をするけれど、普段はそんなに派手な物事を好まないので、今のままのメディア状況では拾っていけないんじゃないかということ。新しいターゲットの発見には、新しいメディアの仕組みが必要ではと考えています」(神山)

「富裕層の世界では、車、ファッション、行く場所など、いろんなものがみんな繋がっている。横櫛で切れるメディアがなかなかない」と語る九島辰也氏

本質的な商品を好み、好奇心旺盛、家族の連帯感が強い人たち

新規ターゲット層の開拓をどうするか。その課題解決に向けて、まず「AdvancedClub」会員1200名へのアンケートに基づき、「サイレントリッチ」を可視化。世帯年収1500万円以上または金融資産5000万円以上の会員を「リッチ」とし、それ以外の会員と比較したグラフを作成、提示しました。そこから見えてきたリッチの傾向は……

  • お金のかけ方 → 投資比率が高く、資産を増やすことへの関心が高い
  • 購買を決める理由 → 品質や高級感を重視する
  • 買い物をするときの気持ち → 高くても品質が良いものを購入したい、文化的背景のある商品に魅力を感じる

「我々が言っている富裕層というのは、もともと大きな資産を継承している人たちで、その資産を増やすことへの関心が高い。品質や高級感を重視して、良いと思うもののみ購入するのは、流行に流されないという言い方もできるかもしれません。また商品の文化的背景とはモノのストーリー。その背景を知った上で買うのはあたりまえのことなんですね」(神山)

「なぜメディアが、そして広告が『サイレントリッチ』をターゲットにすべきか、もしくはターゲットにしない理由はどこにもない、かというと、富裕層の方々は衣食住すべてのコンシェルジュを求めていて、非常にアウトソース上手。デパートの外商もある意味アウトソースですしね。それで自分が信頼している人、信頼筋の意見を素直に聞いて、かつ新しい刺激を常に求めている。とても聞き上手であることが、メディアや広告が『サイレントリッチ』の方を向く意義で、外商に代わるメディアなり広告のあて方というのは非常に商機かなと思います」(井亀)

「富裕層の人たちって、ダイレクトに何かを問い合わせるということをあまりしないんですね。コンシェルジュ的なもの、外商なのかカード会社のコンシェルジュデスクなのかを通す。そういう傾向が強いです」(九島)

  • サービスや商品の購入の際に参考にする情報 →「雑誌/紙」など自分の価値観にあう情報や、身近な人からの情報を重視する

「富裕層が何から情報を得ているかというと、基本口コミなんですよね。ただその範囲がどうかというと、SNSは見ているんですが、それは我々がPRマークをつけてやっているSNSというよりは知り合いのSNS。ですが、雑誌と『AdvancedTime』も参考にしている。ここで申し上げている雑誌というのは『AdvancedTime』同様、自宅に直接送られてくるものが中心ですね」(神山)

「富裕層の方が書店に行って雑誌を買うのかっていう話で、雑誌はもう年間で定期購読を頼んでいますから、自動的に送られてくるんですよ。それもいつ申し込んだのかも忘れているくらいで普通に毎月届く。そういう雑誌の読み方です」(九島)

「自分が信頼している、というか、生活の中に水か空気のようにある毎朝届く新聞に同梱されている『AdvancedTime』は、もともと信頼を担保できていると言えます」(井亀)

  • 価値観 → 新しい発見や学びを楽しむ傾向が強く、好奇心を満たすための出費はいとわない、また家族との時間を大切にしている

「知識欲が高いと、知的なレベルで、モノの背景にある物語を良いと思えば高いものでも買う、となるわけです」(神山)

「私どもが取材をしていて非常に特徴的だと思うのが、リッチな方はとても家族仲が良く、3世代で住んでいるケースがすごく多いことです。それで、お孫さんに『今日のおばあちゃんの格好どうかな』と聞いたり、貸し借りをおばあちゃんとお孫さんでしたり。そういう意味でも家族単位、夫婦単位での消費を狙える。それも新しい広告獲得、そしてメディアのあり方なんじゃないかなと思います」(井亀)

「サイレントリッチ」の特徴を簡単にまとめると、以下のようになります。

  • 無駄がなく洗練された消費を好み、賢く美しい生き方をする。本物志向で、トレンドに左右されることを好まない
  • 好奇心が強く、自身の価値観にあう情報元からの新しい発見を求めている
  • 家族のつながりが強く、資産を残そうとする傾向がある

『AdvancedTime』井亀真紀編集長は「『サイレントリッチ』は家族単位、夫婦単位での消費を狙える。ラグジュアリー商材を効率よく3世代に、そしてライフスタイル全てをカバーする形であてていくことには強い自負がある」と語った

どのように情報を伝えるかが、「サイレントリッチ」へのアプローチのカギ

「サイレントリッチ」へのアプローチは、そのインサイトと生活スタイルの両面を踏まえることが重要。『AdvancedTime』はファッションに限らず、ライフスタイル全般のラグジュアリー業界に精通した編集部が、商材を「好奇心を刺激する情報」として発信するとともに、「訴求商品=無駄のない洗練された消費」と印象づけます。また家庭に届くタブロイド紙という形式で、家族間の会話の中に商材訴求を提供します。

「『サイレントリッチ』にきちっとアプローチできるのは、新聞に同梱されて富裕層エリアに配られるダブロイド紙のサーキュレーションの仕組みなんじゃないかと思っています」(神山)

「新聞同梱媒体だからこそ、個ではなく家庭に入り込むことができ、3世代への訴求が一度にできる。と同時に、衣食住すべてにおいて学びや新しい気づきを得たいという、いわば『知』の渇望に水が注げる。良質で本物で新しいものというのは、どのラグジュアリークライアントさんも発信したいことで、それが一挙にできる手応えを感じております」(井亀)

実際、年4回発行が原則の『AdvancedTime』ですが、2023年度は通常号が6回、1冊買い切り号が4回と非常に好調に推移。好調の理由はやはり反響の大きさです。

「その反響というのは、誰が反応しているということではなく、例えば高級時計だったら、家の財産にもなるし、それなら買ってもいいか、となる。そこが特定の個人にあてた形のファッション誌とはちょっと違うところですね。ですので、ファッション、時計、ジュエリー、アート、車、美容、食と、どんなジャンルも貪欲に構成して見せています」(神山)

「『サイレントリッチ』にきちっとアプローチできるのは、富裕層エリアに配られるダブロイド紙のサーキュレーションの仕組みなんじゃないかと思っています」と、『AdvancedTime』神山敦行発行人

さらに「サイレントリッチ」向けの広告施策として、厳選された人たちへのイベント訴求というアプローチも。イベントの報告をタブロイド紙面のほか、WEBサイトにも掲載することで、イベント参加者以外にもリーチが大きく広がります。

「今回のアンケートは『AdvancedClub』会員から抽出した方々からとったものですが、この方々は非常にロイヤリティーが高く、私どもが2022年に開催したイベントにも来ていただきました。今日お話しした『サイレントリッチ』そのものといった方々です。家庭に届くタブロイド紙のサーキュレーションのアプローチと、もう一つはそこから出てくるセグメントされた人たちへのアプローチ。『サイレントリッチ』は友人のSNSなど横の繋がりが強いので、イベントをもとにそちらにも繋がっていくようにしたいと考えています」(神山)

「ラグジュアリー商材を効率よく3世代に、そしてライフスタイル全てをカバーする形であてていくことには強い自負を持っております。また『AdvancedClub』の会員は『サイレントリッチ』層の一つのスモールコミュニティ化しつつあるので、それをいろんな広告メニューに紐づけて、ぜひ皆さまとご一緒したいと思っています」(井亀)

今後の富裕層マーケティングのキーワードとなる「サイレントリッチ」。そのリアルな動向が浮かび上がるトークセッションとなりました。新しいブルーオーシャンとしてしっかり存在するこの層に向けて、車や時計、ジュエリーのみならず、様々な高単価商材の広告戦略が考えられそうです。

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