歴史とトレンドの融合で、読者の“ときめき”を創出。タイアップでもワクワクする企画を届けます。 『Sho-Comi』金井順子編集長インタビュー
2025/04/07
クライアントとの共創では、特に10代向けジャンルと親和性が高いと考えています。
2003年、小学館に入社。『ちゃお』『ベツコミ』を経て、『Sho-Comi』編集部に配属。産休を経て『月刊フラワーズ』『ちゃお』へ。2024年10月より『Sho-Comi』編集長に就任。少女漫画編集一筋で、数多くの作品に携わってきた。

時代とともに変化する読者を追い、“ときめき”をつくる――王道の少女漫画誌です!
『Sho-Comi』といえば、半世紀以上の歴史を誇る少女漫画誌のパイオニア。恋に憧れる女子中学生に向けた、ドキドキとキラキラに満ちた作品を届けてきました。映像化作品も多く輩出していますが、今の読者に響く“王道の少女漫画”とは、どのようなものだと考えていますか?
「意識しているのは、憧れの恋愛や理想のヒーロー像の変化です。今の中学生は、どんな恋愛に憧れ、どんな男性像を理想とするのか――その価値観の移り変わりを常に注視しています。そこで、編集部では「今ってこういうのが流行ってるよね」「このキャラ、ウケるんじゃない?」と、日々雑談を通してアイデアを出し合っているんです。
例えば「あのオーディション番組に注目している」といった話題が出たら「選ばれるプロセスや成長、高揚感を漫画に落とし込んだら面白いかも」といったように、アイデアがふくらんでいくことも。そうやって、今の中学生に刺さる要素をキャッチし、作品に活かしていく。こうしたセッションを経て、『Sho-Comi』らしいテイストが自然に形成されていくのかもしれません。」
中学生の流行って、大人のトレンドとは異なる盛り上がりを見せるんですか?
「基本的に「大人のムーブメントのちょっと後を追う」傾向があります。韓国ブームも最初は大人の女性で人気になり、その後に『Sho-Comi』読者の中学生に浸透していきました。
だから、「今、大人で流行っているものが、この後に中学生にも響くかも」と考えながら企画を練ることが多いです。SNSのトレンドをチェックしたり、配信ドラマを見たり、ネット書店のランキングを確認したり、編集者がそれぞれのアンテナを張っています。」
「かっこいい男子像」いわゆるイケメン像も、時代によって変わってきていますね。
「そうなんです。以前は“オレ様系”の強引な男子が人気だったこともありますが、今は「相手の気持ちをしっかり理解してくれる」「優しくて寄り添ってくれる」男子が支持される傾向にあります。「一見クールだけど、私にだけ特別な一面を見せてくれる」キャラもすごく人気ですね。これはツンデレとはまたちょっと違っていて「この子だけに見せる顔がある」という“特別感”が、今の読者に刺さるのかなと思います。」
そんな“今の理想の恋愛像”を『Sho-Comi』ではどう表現しているのですか?
「男性アイドルのグラビア企画ひとつとっても、ただ写真を載せるだけではなく、ストーリー性を持たせるようにしています。「彼らの秘密基地に足を踏み入れて…」みたいなシチュエーションを作って「まるで自分がその場にいるような感覚」を楽しんでもらえるように演出しているんです。
漫画に関しても「読者がどこかで必ず“ときめき”を感じられる作品づくり」を大事にしています。恋愛でキュンとするのもいいし、ファンタジーの世界で「こんなこと現実では絶対に起こらない!」っていうドキドキ感を味わうのも、サスペンスで「この先どうなるの!?」とハラハラするのも、すべてが読者にとっての「ときめき」につながるんです。少女漫画誌は「ときめきの雑誌」だと思うので、そこはブレずに大切にしていきたいですね。
でも、あまり型にはめすぎると、新しい企画が生まれにくくなるので「ときめき重視」の基本方針を示しつつ、作家さんや編集者の自由な発想を大切にしています。『Sho-Comi』らしい“ときめき”を、これからも読者に届けられるよう、編集部全員でアイデアを出し合っていきたいですね。」
50年以上の歴史を誇る少女漫画誌として、新しい時代の読者に作品を届けていきたい
1968年の創刊から半世紀以上の歴史を重ねてきた『Sho-Comi』は、少女漫画誌の中でも特に長い歴史を持つ雑誌です。その「資産」を感じる瞬間はありますか?
「これまで、篠原千絵先生の『天は赤い河のほとり』、渡瀬悠宇先生の『ふしぎ遊戯』など、数えきれないほどのヒット作が生まれてきました。こうした作品が読み継がれているというのは、やはり大きな財産ですし、それを次世代にどうつなげていくかは、常に考えています。何より、旧誌名が『少女コミック』ということもあり、少女漫画というカテゴリーそのものを象徴する雑誌という思いは強いです。」
『Sho-Comi』は『ちゃお』の読者が次に手に取る雑誌としての側面もありますが、その読者が成長するにつれ、どのような位置づけを考えていますか?
「『Sho-Comi』読者が、大人になっても漫画を楽しみ続けていくというケースもありますが、メインとして、小学生の『ちゃお』から『Sho-Comi』、そして『ベツコミ』『Cheese!』へと移行する流れは確かにあります。特に小学生・中学生くらいまでは、その移行が比較的明確です。だから、『ちゃお』の動向は常にチェックしていますね。文化的にも近いですし、小学生たちが何に夢中になっているかを知ることは、『Sho-Comi』の雑誌づくりにも大きく関わってきます。ただ、中学生から上の年代に進むと、年齢による区分けがやや弱まり「自分の好きな作品を自由に選んでいく」スタンスの読者が多くなりますね。」
イケメン像や恋愛観が変化している、というお話もありました。『Sho-Comi』も進化を求められる局面もありますね。
「そうですね。50年以上続く雑誌だからこそ、守るべきものと、新しく変えていくべきもの、その両方を大切にしないといけません。編集部のメンバーも「少女漫画のエントリー雑誌」という意識を強く持っています。『Sho-Comi』を読んでいた読者が、大人になっても漫画を楽しんでくれるように、時代の変化を捉えながら、新しい作品を生み出し続けることが大切だと考えています。」
漫画のブランド力と合わせて、タイアップの可能性が広がっていきます!
雑誌として、タイアップやコラボにも積極的に取り組んでいますね。
「特に付録でのコラボレーションは、媒体として力を入れてきたところです。夏休みや年末年始、ゴールデンウィーク号といった「特大号」は、新規の読者が入りやすいタイミングですし、合併号として販売期間も長めです。そのため、アパレルブランドなどと組んで付録を展開し、話題性を高めてきました。
クライアントとの共創では、アパレルや流行のコスメ、飲食系のブランドなど、さまざまなジャンルとのコラボを模索しています。特に10代向けに発信しているジャンルとは親和性が高いと考えています。漫画の中に実在のブランドやお店を登場させることで、読者に自然とトレンド感を伝えられるでしょう。今後も積極的に進めていきたいですね。
例えば、梅澤麻里奈先生の『次はいいよね、先輩』は、もともと高校生の恋愛を描いた作品ですが、現在は大学生編に入っています。作中で実在のアパレルブランドの服をキャラクターに着せたり、人気のスイーツ店を登場させたりすることで、読者がトレンドをキャッチできる仕掛けを作ることも視野に入ってくるでしょう。」
誌面のターゲットは中学生ですが、作品によっては上の世代にも届くものがありそうですね。
「『Sho-Comi』の誌面は10代向けに作っていますが、コミックスになると20代や30代の方にも手に取っていただくことが多くなります。作品の持つ雰囲気やテーマによって、より広い世代にリーチできます。
最近では、華夜先生の『はらぺこ漫画家3000円グルメ日記』が幅広い層に人気です。「3000円の予算で、どこまでグルメを楽しめるか?」をテーマにしたエッセイ漫画で、X(旧Twitter)で話題になることも多く、広く拡散されることがあります。10ページほどの連載ですが、外食チェーンや食品メーカーとのコラボや「今回は特別に5000円予算で!」といった特別企画で憧れのお店を紹介したりと、新たな展開も考えられますね。」
WebやSNSなど、デジタルとの連携についてはどのように考えていますか?
「SNSとの連携という観点でも、コスメブランドやインフルエンサーとのコラボレーションなど、新しい試みを積極的に展開しています。優木もあ先生の『女王エリカの課外授業~放課後before after~』は、コンプレックスや自信が持てない事情を抱えた女子が、エリカというカリスマ的なキャラに外見だけでなく、内面から変身させてもらうというストーリーです。実はエリカ自身も過去にコンプレックスを抱えていた経験があり、そこから成長して今の姿になったという背景があるので、読者も「自分も変われる!」と感じてもらいやすいんです。そこで、この作品と美容系動画クリエイター・鹿の間さんとの誌上コラボを企画しました。ストーリー展開とあいまってコスメブランドとの相性も良く、描き下ろしのパンフレット用漫画を制作するなど、さまざまな形での展開が考えられます。今後もメイク関連、コスメブランドとのタイアップ企画をさらに広げていきたいですね。」
作品をより広く届けるための施策としては?
「Web展開の強化も重要なポイントです。例えば、池山田剛先生の『小鳥遊家の妹は花嫁になりたいっ!!』は、『Sho-Comi』の読者だけでなく、サンデー系のラブコメ好きな層にも届く可能性があるのでは、と考えています。『サンデーうぇぶり』(『週刊少年サンデー』『ゲッサン』『サンデーGX』が運営する漫画アプリ)に協力してもらって、過去作の一気読み企画を実施するのも面白いかもしれません。作品の魅力を伝える手段は、紙だけではありません。WebやSNSを組み合わせることで、「少女漫画」の枠組みに囚われずより多くの読者にリーチできると考えています。
媒体の枠を超えて、より自由に作品を広げていく動きは、企業とのタイアップやコラボレーションの可能性を広げることにもつながるはずです。今後も、読者にとって新しい価値を提供できる取り組みを積極的に進めていきたいですね。」
『Sho-Comi』の作品は、いわゆる“王道少女漫画”が中心でしたが、作品の多様化も進んできました。タイアップの可能性も広がりそうです。
「従来のキラキラした王道恋愛作品に加え、近年はダークヒーロー系の作品も注目を集めています。『魔法少女ダンデライオン』は、悪役がヒーローという設定で、本来敵のはずのキャラクターが主人公と絆を結び、共に戦う……という展開が魅力の作品です。心理描写やバトル要素もしっかりしており、ひと味違う作品として、今の読者層に刺さっています。
他媒体で『コロコロコミック』の『ブラックチャンネル』のように、ダークな要素を持ちつつキャッチーで読者を引き込む作品作りも参考になります。『Sho-Comi』も、王道の恋愛のみにとどまらず、多様なジャンルの作品を打ち出して読者を魅了し、さらに共創企画の選択肢も広げていきたいですね。」
「いっけない~! 遅刻、遅刻!」――撮影では、トーストをくわえて通学する少女漫画の定番シーンを再現。ノリノリで臨んでくれた金井編集長に理由を尋ねると、「パンが大好きなんです!」と笑顔で即答してくれました。出身地の神戸はベーカリーが多く、大学時代はパン屋でアルバイトをしていたそう。そこで「パンをもらいすぎて怒られた」というエピソードがあるほど、筋金入りのパン好きです。今も美味しいパン屋巡りが何よりの趣味で、最近は『dacō お茶の水』の「じゅわっととろける」生ドーナツにハマっているのだとか。
漫画への情熱も、パンへの愛も、根底にあるのは「好きなものをとことん楽しむ」スタンスなのかもしれません。金井編集長がリードする『Sho-Comi』には、物語の生地をこね上げる作家と、その発想を支え、最高の仕上がりに導く編集者陣が揃っています。手塩にかけたストーリーはふんわりと膨らみ、読者の心を満たす少女漫画に――編集部という工房から、今日もホットな作品が続々と送り出されていきます。
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