「つながり」がキーワード。エンタメ軸を強化しながら、新しい見せ方・新しい読者を獲得中! 『CanCam』加藤真実編集長インタビュー
2025/03/25
読者の母親は元読者。母娘でファッションや美容、体験をシェアして楽しむ、そんな企画も考えています
他社の女性向けカジュアル雑誌の編集者を経て、小学館に入社。『AneCan』創刊メンバーとして同誌に7年間携わり、『Oggi』では部員とデスク、『CanCam』副編集長、2020年から『CanCam.jp』編集長を務め、2024年10月より現職。

ファッションのボーダレス化に伴って、アイテムが売れる仕掛けにも変化
大学生から社会人に大きく環境が変わる年齢の女性から高い支持を得て、創刊から44年間、数々のブームを仕掛けてきた『CanCam』。近年は通常版に加え、男性アーティストを表紙に起用した特別版も話題です。
「コアな読者は25歳前後ですが、素敵な大人になるためのファッション誌という基本路線は変わりません。25歳になった時に素敵な女性になるためのファッション、美容など、この世代が必要とする旬な情報を詰め込んだ誌面作りをしています。うれしいことに、特別版の表紙をきっかけに、『CanCam』を読んだことがなかった方が読者になっていただくことも多く、以前よりも読者のテイストはバラエティに富んでいるようになりました」
特別版がおためし版となりファンをつかむところは、さすが『CanCam』。エンタメの方向性はよい循環になっているようです。
「テイストは様々とはいえ、読者層の中心は25歳前後、都心在住の有職者になります。そんな読者がよく言うのは『私は経済を回している』。紐解くと、自分が興味あること、例えば、美容・推し活・ファッションなどにはしっかりとお金を使っているということですね。でもこの世代は、興味のないことにはお金をそこまでかけません。自分が大事だと思うことにはとことん課金をし、どうでもいいと思う部分にはお金をかけない、そんなメリハリのあるお金の使い方をしています。アレもコレも満遍なく欲しい、使いたいという感じではなくなりました」
そんな読者の興味のトレンドは「旅行」と「稼ぐこと」だそうです。
「ファッション、ビューティーの次に挙げるとしたら、旅行です。25歳前後はコロナ禍に大学生だったため、旅行らしい旅行に行ったことがなくて、海外旅行もこの年齢で1回目という人が意外と多いんです。そして特徴的なのは、稼ぐことへの意欲があること。物価高の影響もあるんですが、理想とする年収を〝自分で作っていく〟ためのアプローチができる世代で、副業にやる気があります」
さらには、一般的に論じられている「イマドキの若者は結婚したくない」の実情も違うと加藤編集長は考えます。
「婚活企画を実施した際、読者に『結婚に対しての意識調査』を行ったところ、90%以上の女性が〝結婚をしたい〟と思っていました。夢を見ているというより、現実を見据えて将来を考えている人が多いという印象です。その人たちに対して、夢を見せながらもイマドキの結婚生活や出会い方などを見せる企画やタイアップがあれば、読者の共感を得られる気がしています」
結婚に興味もあり、恋愛に消極的ではない読者も多いと言います。その証拠に、カップルで見せるデート企画は根強い人気を誇り、最近では思わぬ売り上げにつながっています。
「服やコーデをカップルで見せることを望まれるクライアントさんもいらっしゃって、その時に男性に女性向けの服を着用してもらう時もあるんですね。例えば、ハート柄のオーバーサイズのレディースのニットを男性タレントさんに着用いただいたところ、すごく反響がありました。ビッグシルエットはトレンドですし、男女どちらが着てもかまわない。ハート柄を男性が着ても、『イイね!』となるのが今です」
そんなことから、売上に直結する〝出口と入口〟が以前より増えたようです。
「雑誌にエンタメ切り口を取り入れたことで、男性アーティストのファンを入口に雑誌を購入した人が、推しが着たアイテムを買う、だから売れるという出口ができました。好きな人が着ていた服、つけていたリップ、ジュエリーなどを自分も身につけたい! という欲望があり、それらが売れるという出口も。平成レトロの流れもあるのか、最近20代に非常に人気のアンテプリマ様とタイアップ企画でご一緒した際は、メンズラインもあることからカップルで持つ提案を行いました。キラキラしたかわいいバッグなのですが、女性が持っても、男性が持っても素敵に映える。25歳の読者層を読み解くキーワードのひとつは『一緒に買える・使える』です」
そんな読者を知るための、ふたつめのキーワードは「消費のハイブリッド」です。
モノ消費とコト消費の両方を叶えるために、メリハリをつけるZ世代
タイアップと相性がいいのは、旅行やテーマパークへの遠出、ご近所も含めた「おでかけコンテンツ」とのことです。
「少し前みたいにド派手な映える場所に是が非でも行って、というモチベーションはなくなった気がしますが、どこに行っても写真は撮りたいよね、という感覚はずっとあるんだと思います。『#自然界隈』というハッシュタグが流行しましたが、特に映える場所じゃなくても、友達とこういう場所に行って楽しかったよ、みたいなことをSNS上でコンテンツ化するのが上手い世代。だから、完全にモノ消費をしないでもない、コト消費に振り切るでもなく、〝モノとコト消費のハイブリット〟。お金を使えるポイントが限られているから、読者はしっかり管理して、やりたいことを叶えていますね」
その管理感覚は、モノ消費のこんな傾向に表れているようです。
「ハイブランドへの興味も強いと感じます。手に取りやすい価格の服×ハイブランドのバッグ、であったり、逆にちょっと頑張っていい服を買って長く着るなど。いいものを長く使う、というのはSDGs観点からしても理に適っています。だからこそ、1点いいアイテムがあるとバズって〝欲しい〟になるので、むしろハイブランドのタイアップは、Z世代にアプローチしやすいと思っています」
読者像を明確にしているだけに、タイアップやコラボをしても安心感がありますが、読者を読み解く最後のキーワードは「お母さん」です。
「現読者モデルのお母さんが20代の頃、『CanCam』を読んでいて、それがきっかけで『CanCam』を知りました! という声も聞きます。また3月に実施した『韓国コスメイベント』でも、母娘で来場してくださっていた方々もいて。これは『CanCam』という40年以上続く老舗ブランドならではの光景だと思いました。さらに、高級コスメを母へプレゼントしたり、逆に母から『これいいよ』とおすすめされたりする経験をしたことがある、という読者の話を基に『母娘で使える名品コスメ図鑑』という企画も進行中。このように『母と娘』や『パートナー』『友達』『推し』など、〝他者や社会とのつながりの中に商品が存在する〟というリアルシーンに落とし込んだ見せ方は『CanCam』がもっとも得意とするところです。今後も読者のライフシーンやインサイトに寄り添い、その切り口バリエーションを増やしていければと思っています。本誌を通じて得たデータは、クライアントさんにフィードバックするのはもちろん、ニッチなご提案もできると思います」
誌面で紹介したり、教えてもらったりしたシートマスクを「今、めちゃくちゃ多くの種類があるので、コスパのいいものを毎日変えては楽しんでいます」という加藤編集長。仕事と育児の両立で自分のことを後回しにしがちな日々の中、楽しく気分転換しながら、『CanCam』ブランドの新たな価値創造をしていきます。
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