メディア事業を通じて得たZ世代のリアルから、SNSマーケティングを提案! 『MERY』奥松彩夏編集長インタビュー
2025/01/24
Z世代が〝今〟知りたい情報を届け、トレンドのデータを蓄積
デジタル広告代理店のアカウントプランナー、美容メディアの編集者を経て、2021年に『MERY』編集長就任。キャリア形成のスタート時点でソーシャルメディアが世間に浸透、プロモーションの活用が盛んになった世代にあたる。
動画編集スタッフは全員Z世代だからトレンドを逃さない
SNSプラットフォームを中心にコンテンツを展開する『MERY』は、SNSの総フォロワー数約180万人。月間動画制作本数120本以上、月間動画再生回数約6000万回を超えるなどショート動画に強みを持つメディアです。Z世代のトレンドをキャッチ、発信しています。
「Webやアプリの記事メディアのイメージが強かった『MERY』ですが、今は〝SNS動画メディア〟と言っても過言ではありません。ユーザーの反応をタイムリーに企画に反映させたり、クリエイターと共にコンテンツを制作するなど、〝トレンド×ユーザーのコンテンツ共創〟メディアの側面も持ち合わせています」
ターゲットは、SNSのメイン・ユーザーである20代を中心としたZ世代です。
「全アカウントで1日5~6本の動画をアップしていまして、内容は、メインのアカウントではレシピやハンドメイド、タレントのインタビュー、ライフハックなど、今の流行からこれから流行りそうなことまで扱っています。インスタは美容関連専門、贈る相手に喜ばれる手土産・ギフトを紹介するアカウントも運営しています。
『MERY』ユーザーのほとんどは女性なのですが、ショート動画・リール動画を制作する編集部のメンバーも現在は全員女性でZ世代です。ターゲットど真ん中の当事者が企画・制作することで、よりユーザーに近い感覚でコンテンツを発信することができていると感じています。」
メディア事業の中核である動画制作で第一に心がけているのは「身近」。
「いまだかつて誰もやったことがないインパクトがあることよりも、〝たぶん、誰かがやってみたい〟や〝誰かに聞くまでのことじゃないけど、これ知りたかった〟と思えるような身近なことを取り上げ、『MERY』のフィルターをかけて発信をしています。フィルターとは、『MERY』のユーザーならこんなことに困っていて気になっているだろうな、かわいいと思ってくれるだろうな、休憩の1~2分で動画を見たらリフレッシュするだろうな、という視点を大切にしています。Z世代をターゲットとして発信していく中でも、現在は様々な世代の方に届いて見ていただけるまでに成長しました」
二番目に心がけているのは、Z世代に寄り添った「テーマ」です。
「Z世代は人によって好きなものが違い、コレといった流行りがなかったりするんですね。みんな、好きがそれぞれ。〝誰の好きも否定しない〟をテーマに制作しています」
そして、三番目は「Z世代の感性を最大限に活かす」こと。
「私が編集長として大切にしていることの一つに『MERY』はコレ、という固定概念や決まり事をなるべく作らないということがあります。編集部メンバーそれぞれの感性を活かしてもらい、この動画にはこれが合うと各々が決めて編集してもらいたいからです。これにより、メインのアカウントで1日2本の動画を上げても既視感なく、ユーザーが連続で見ても飽きないようになっています。
また、企画会議において、これは本当にバズるのかな? と疑問に思っていた動画が1000万回再生したりします。こんな経験の積み重ねから、私が知らないことや疑問に思うネタがあっても、当事者である編集部のメンバーが間違いないと思えるのであればOKして、なるべくこれは違うと決めつけないようにしています。私がトレンドを知る頃には、当事者の中では終わっている話のこともありますので」
トレンドの移り変わりが早いZ世代、という事情も背景にはあるようです。
「動画編集方法も流行りがあって、1か月単位や、早ければ数週間で終わることもあります。スピード感をもって動画制作をしなければイマドキ感を逃してしまいますが、編集部のメンバーがZ世代なので、リアルなタイミングでトレンドを知れる。この強みがあるからこそターゲットに響き、ユーザーがまさに今欲しかった情報を届けられているんだと思います」
従来の紙媒体の女性誌と『MERY』が大きく異なる点は、メディアの顔となるモデルやインフルエンサーを立てていないことです。
「自身にインフルエンス力がある、自分で発信できる方が集まった1000人規模の『MERYインフルエンサー』というコミュニティ組織があり、コンテンツへの出演やイベントに参加してもらうのはもちろん、コラボ商品の開発なども依頼しています。ファッションや美容などに特化した方も多くいますが、『MERYインフルエンサー』の特徴としては顔出しをしていない方もいるというところです。実際にZ世代でフォロワー数が多いインフルエンサーさんは顔出しをしていない方も多く、理由は、ユーザー自身が〝自分事〟化しやすいからだと考えています。
モデルやタレントさんだったり、インフルエンサーでも顔が出ていたりすると、自分とは遠いと感じてしまうんですね。人は人、自分は自分の考えが強くて、情報は自分にとって必要か不必要か瞬時に見分けて、また、自分っぽいか自分っぽくないかが大事な要素であるZ世代ならではです。『MERY』の心がけている身近さ、ユーザーが自分でも合いそう、できそうと思ってもらうために、『MERY』のコンテンツでもあえて特定の人物を立てて印象をつけることはしていません」
Z世代の生の声×編集力で、企業が訴求したいことを的確に届ける
流行りのサイクルが早い、憧れより身近さ、好きは百人百様のZ世代に向けて日々動画コンテンツを発信している『MERY』。最大の強みは、メディア事業を通じて得た〝Z世代の生の声〟を活かしたシンクタンク機能です。
「コミュニティ事業では、イベントの実施だったり、インフルエンサーのキャスティングだったりとかも含めて、様々なコミュニティの場を作っています。さらには、一からコミュニケーションプランを作る『MERY Z世代研究所』もあり、これにはZ世代のトレンド・コミュニケーション・プランニングなどをお話するセミナー活動も含まれています。
機能は広告代理店に近いですが、自前のメディアを持っていることからZ世代の生の声を活かした制作ができますし、してきています。コピー制作、LP制作、店頭の動画制作までワンストップで提案できるので、Z世代の課題解決に対して企業がプロモーションしたい時にどうコミュニケーションをとればいいか分からない、という案件のご相談を多くいただいています。言語化しにくいのがZ世代なので、実際を知る肌感がないとリーチが伸びないため、最近は件数が増えてきています」
そこには、Z世代ならではの感性が関係しているようです。
「広告かどうかを敏感に察するので、さじ加減が難しいんです。そのため、案件のご依頼を受けたら訴求したいことを重点的にヒアリングして、できる限りすべて任せて欲しいと伝えさせていただきます。リピートをいただく案件のひとつに、旅行関連があります。例えば、ホテルの場合、従来であれば部屋や宿泊プランの紹介をメインに考えがちですが、最寄り駅から始まり、周辺を観光してホテルの紹介をすることを提案します。広告色を弱めた内容になりますが、Z世代に刺さるのはVlogのような自然な流れなんです」
広告色を薄めるためには、ほかにも工夫があります。
「衣食住すべてに関わることと相性がいい『MERY』ですが、最近、再生回数が伸びた動画にライフハック・実用があります。収納テクや掃除のテクニックなどが人気で、日用品とも相性がいいようです。これらの動画は、別の用途のアイテムを意外な使い方をして収納する、ラクにする掃除コツなど、アイデアやテクニックを紹介する内容ですが、使っているアイテムはクライアントの商品。アイテムを自然になじませるようにしています」
インフルエンサーを活用した新商品やトレンドに合わせたプロモーションも行います。
「ファッションならインフルエンサーを起用しますが、『MERY』のコミュニティはインフルエンス力がある方々が集まっているため、プロモーションするアイテムにアレンジを加えるなど各々が工夫を凝らした内容になります。実績でいえば、ダイアナさん、AOKIさんとはインフルエンサーを入れたトリプルコラボで、〝絶妙に好きそうなアイテム〟を制作しました。このように、メディア×インフルエンサーのコミュニティ+イベント実施まで行えるのが『MERY』ですが、今後はここを強化してブランド力を高め、〝Z世代を包括できるメディア〟に育てていきたいと考えています」
奥松編集長は「みんなの好きを広めるのが楽しいんです」と言います。源流にあるのはご自身の学生時代、肌荒れでツラい思いをした中で、いいとされるモノやコトを片っ端から試し、よかったものを「シェアしたい」と思ったこと。発見した感動を伝えたいというモチベーションが、ユーザーが楽しい気分になれるコンテンツ制作を支えています。
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