共創の可能性は無限に広がっているので、企業さんからのご連絡をぜひお待ちしています。 『てれびくん』益江宏典編集長インタビュー
2023/04/28
常に子供たちの興味の少し先を考えて記事と付録を作っています
益江宏典編集長は1998年に入社、『コロコロコミック』編集部に配属され、カードゲーム「デュエル・マスターズ」などの製作に携わり、現在も連載が続くギャグマンガ「でんぢゃらすじーさん」の編集も担当。2018年、『てれびくん』に異動してからは主に仮面ライダーシリーズを担当、2021年から編集長に。

昔も今も子供たちは圧倒的な強さを誇るヒーローに憧れを抱く
1976年5月に創刊された『てれびくん』のご説明をお願いします。
「好奇心いっぱいの元気な男の子におくるキャラクター情報誌です。テレビなどで活躍しているヒーローたちのカッコいいグラビアや最新情報が満載されていて、子供たちが関心を寄せている最新ホビー&おもちゃ情報も幅広くフォローしています。読者層は8歳くらいまでの男の子。以前は、その子たちが幼稚園の卒園とともに『てれびくん』も卒業する傾向でした。それがだんだんと小学2~3年生になっても愛読してくれる熱心な子供たちが多くなりました。それは、スーパー戦隊シリーズや仮面ライダーシリーズが新作を発表するごとに、次から次へと強くて魅力的なヒーローを生み出しているからでしょう。
昔のヒーロー作品は、それこそ単純な勧善懲悪の世界を描いていたものが多かったんです。主人公がひたすら努力を積み重ね、最終的には悪の組織を倒すという。でも、最近のヒーロー作品はストーリー展開が複雑で、さらに主人公たちの正義を貫く背景が一筋縄ではいきません。なぜ、自分は変身して戦うのか、戦わなければいけないのか、そういったことを深く追求していたりする。子供たちには、難しいテーマを掲げたシリーズ作品かなと思うこともありますけど、それは大人が考える基準でしかないんですね。作品の真意を100%理解できなくても、テレビ画面から伝わってくる雰囲気で子供たちはちゃんと主人公の苦悩や悲しみを分かろうとしているんです。だからこそ、今の子供たちは主人公の心の動きを常に追っていきたい、次の展開はどうなるんだろう、もっとたくさんの最新情報を知りたいという衝動のようなものが強い。それが熱心な子供たちを生んでいると思いますし、結果的に読者の年齢層が延び、長く『てれびくん』が読まれている要因のひとつかもしれません」
昔と比べて単純明快なヒーローよりも、今の子供たちは複雑な背景を背負っているヒーローを支持している。子供たちの憧れの対象の移り変わりが、とても興味深いです。
「ただ、憧れという点では、昔も今も変わらずに子供たちはヒーローに対して圧倒的な強さを求めていますよね。たとえ敵であったとしても、強ければ強いほど人気が出ます。子供たちからすると、戦闘時に強ければヒーローや悪役関係なく憧れを抱くのでしょう。例えば、『仮面ライダー』シリーズの『仮面ライダービルド』(2017年放送)という作品に敵役として登場てくるエボルトという宇宙生命体が強かったんです。主人公の仮面ライダービルドを始め、仲間のライダーたちもバンバンなぎ倒すんですよ。まさに絶対的な強さ。ストーリー的には憎むべき存在のエボルトなんですが、子供たちはその強さに魅かれていましたね。
今の子供たちはやたらと強くて、なおかつ自分が進むべき道の行く末に苦しんだり、悩んでいるヒーローを求めているのかもしれません。少なくとも深みや突き抜けたものがないと満足してくれません。そういう意味では、現在放送中の『仮面ライダーギーツ』は子供たちが求めているヒーロー像のひとつといえるでしょうね。主人公の浮世英寿はそもそも謎だらけの青年ですし、何を願い、何を決意して戦いに挑んでいるのかが解明されていないところがある。そこに子供たちは興味津々ですし、しかも彼が変身してギーツになると、抜群の強さを見せる。戦うたびにパワーアップ、スケールアップを成功させていきますから、子供たちが夢中になるのも分かります」
『てれびくん』の特徴として毎号豪華でワクワクする、お楽しみの〝付録〟が付いてきます。付録欲しさに買い求める子供たちもいると思いますが、制作にあたり苦労なさっていること、また人気の高かった付録商品を教えてください。
「付録は時間が勝負なんです。スーパー戦隊シリーズにしろ、ライダーのシリーズにしろ、発売される号の放送内容に沿った、合ったものを提供しなければいけないわけです。できれば、放送される内容の少しだけ早いタイミングで付録を作るのが理想となります。そうするためには2月の段階で8月に発売される号の付録を何にするかを考えなければいけない。2月の時点で8月の放送内容が分からない場合もありますし、少しでもよいものを、ちゃんと作品の内容に合うものを、しかも子供たちが喜んでくれるものを……と試行錯誤しているうちに、時間だけが確実に過ぎ去っていくという(笑)。最初に考えた付録のアイデアが放送される月の内容と少し違っていて、結局はストックしておいて、翌年に実現化させたりすることもあります。
付録にせよ、記事を作るにせよ、月単位で考えていますけど、子供たちが興味を示すサイクルって、実はもっと早いんです。今月号で、ライダーと戦うライバルはこんなヤツだ! と記事を作り、来月号にそのライバルはこういう凄い必殺技があるぞ! と関連した記事を書いても、すでにその時点で子供たちの興味は新しい何かに移行しています。常に子供たちの興味の少し先を考え記事を書き、付録を作り上げる……そういうところが難しいですね。だから、編集作業をしていると、1年なんかあっという間です(笑)。
人気があった付録というと、最近では『仮面ライダービルド』のフルボトル(注・主人公はビルドドライバーというベルトに2種類のフルボトルを装填して変身する)に支持が集まりました。事実、フルボトルを付録に付けた号は完売しました。それから『仮面ライダーリバイス』(2021年放送・主人公がバイスタンプを起動し、リバイスドライバーに押印、スタンプを装填して変身する)のハンコも評判がよかったですね。本編ではバイスタンプ、要はスタンプがキーアイテムなんですが、実際に紙に押すことはできないので、付録では何度も押せる本当のハンコにしたんです。こういったスタンプの代わりにハンコにしてみようかといったアイデアはいつでも考えています。そのアイデアが作品の放送時期などに合わなければ、次から次にストックしていく。付録に関しては、その繰り返しですね」
『てれびくん』との共創のアイデアと可能性は無限に広がっている
これまで『てれびくん』は付録を通して他社との共創を積極的に取り組んでいます。例えば、東映とタッグを組み、スーパー戦隊シリーズ、仮面ライダーシリーズに関する付録を作り続けてきました。では、この付録という共創から一歩先に進んだ展開はどうでしょうか。他社と東映を編集部が結び付け、トリオで新しい商品開発などを目指すような。
「仮面ライダーシリーズはいろんな企業とマーチャンダイジングを行なっていますし、今までライダーに関するものを商品化してこなかった企業が何かしら作り上げたいと希望するならば、その方向性を編集部が繋ぐことができます。それが空いているカテゴリーなら、さらに実現の可能性は高くなると思います。『てれびくん』とコラボすることにより、コレクション性を高めることができますし、毎号その商品の関連記事を展開することで、子供たちの関心も高めることができるでしょう。これはスーパー戦隊シリーズや仮面ライダーシリーズに限らず、小学2年生くらいまでの男の子が喜んだり、楽しんだりできるものなら、そういう展開は可能だと思っています」
今後の展望として、どのようなことに力を入れたいと考えていますか。
「編集部としてはいま、マンガの制作に力を入れています。タカラトミーさんの企画をマンガ化するというアイデアが進行していて、その企画は、タカラトミーさんが提案するおもちゃのアイデアをマンガ化することで、それを読んだ読者の評判がよければ商品化を目指すというものです。ほかにも、『カンジモンスターズ』という子供向けカードゲームを他社さんと作っていますが、これは『てれびくん』と『コロコロイチバン』で、マンガと記事を展開していきます。このように、小学館のほかの児童誌を巻き込んで共創することも可能です。
自社のアイデアを『てれびくん』を使って試していくのは魅力的な取り組みだと思います。また、すでに商品化されているものを『てれびくん』という場を新たに使うことで、より以上に拡散させることも考えられます。そういう意味では、『てれびくん』と他社さんとの共創の可能性は無限に広がっているのではないでしょうか。子供たちがワクワクするもの、ドキドキするもの、夢中になれるもの、そういったものを編集部と一緒に作りたいと企画されている企業さんからのご連絡をぜひお待ちしています」
1年があっという間に過ぎ去るとおっしゃっていましたが、それでもオフの日などは何を楽しんでいるのですか。
「海と山が好きなんです。もう少し暖かくなったら、ウェットスーツを着てシュノーケリングを思いっきり楽しみたいですね。あとは趣味と実益を兼ねて映画鑑賞ですかね。編集企画の役に立つこともありますし。これは僕だけでなく、編集部のみんなもそうです。話題作は編集部のほぼ全員が観ているんじゃないかな。ただ、できるだけ封切り直後に観なければいけないのが大変なんです。そうしないと公開2週目あたりから、編集部内が映画のネタバレ話だけじゃなく、解説や自分だったらこうする! なんて話であふれているので(笑)」
子供の頃は実写の特撮ヒーロー番組よりも、ロボットもののアニメ作品を好んで観ていたという益江編集長。多忙な日々であっても、大好きなシュノーケリングで英気を養い、豊かな想像力や発想力を新たに装填し、子供たちに喜んでもらいたいという熱情も付録にして、全国で待ちわびる元気な男の子たちに『てれびくん』を届けています。
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