子供たちがより元気になれるような遊びや環境を作っていきたいと語る『コロコロコミック』秋本武英編集長インタビュー
2022/11/22
膨らむターゲットに向けた「コロコロカルチャー」を作っていきたい!!
秋本武英編集長は1970年広島市生まれ。94年に小学館に入社し、『コロコロコミック』に配属。折しも第2次ミニ四駆ブームのきっかけとなった「爆走兄弟レッツ&ゴー」の初回掲載直後で、そこからポケモンブーム、ハイパーヨーヨーブームを経験。98年に『コミックGOTTA』の立ち上げに参加し、企画室に1年、編集部に2年在籍。2001年『コロコロコミック』編集部に戻り、12年在籍後、兄弟誌『コロコロイチバン!』に移り、16年には編集長に。19年に『コロコロコミック』10代目編集長に就任。

子供の遊び自体を作品化し、メディアミックスで拡大
2022年に創刊45周年を迎えた『コロコロコミック』。小学生男子のバイブルとして「ビックリマン」「ミニ四駆」「ポケモン」「ハイパーヨーヨー」「ベイブレード」「妖怪ウォッチ」等々、数多くのムーブメントを創り続けてきました。現在は隔月増刊の『別冊コロコロコミックSpecial』、小学校低学年ターゲットの『コロコロイチバン!』に加え、WEBでは公式サイト「コロコロオンライン」、公式YouTube「コロコロチャンネル」、サテライトアニメ専門チャンネルと、コロコロブランドを拡充。幅広いコンテンツで男児心をとらえています。
「子供たちの興味の範囲であれば何でも題材になりうるんですよ。もともと『ドラえもん』から始まった漫画雑誌ですが、『ドラえもん』ってあらゆるものが詰め込まれている作品じゃないですか。それを一つ一つ切り取って、たとえばSFや冒険に特化したストーリー漫画というのがまずあります。それから絶対に外せないのが笑い。ギャグ作品ですね。そして3つめが、子供たちが実際に興じている遊び、ゲームやホビーやYouTubeなど普段の生活で彼らが遊んでいるモノを直接題材にした漫画。ストーリー漫画やギャグ漫画に関しても我々は特別なものを作れているという自負はあるんですが、子供の遊び自体を作品化して、商品をプロデュースし、記事で紹介して、それを実際に戦わせるイベントで皆を集めるっていうのは、たぶん他の媒体にはない、うちの最大のウリなんじゃないかと思います」
2022年7〜8月には3年ぶりのリアルイベント「コロツアー」を実施。最新のゲームやホビーを携えて、東京、大阪、愛知、北海道、宮城、福岡の6会場を回り、子供たちの大歓声に包まれました。子供たちの興味、関心を的確につかんで漫画や記事、付録にし、さらにWEBやイベントのメディアミックスで相乗効果を上げるのはコロコロが得意とする手法。そして子供たちの興味を探る源泉となっているのは、まず毎月の読者アンケート。かなり細かいアンケートをとっているのに加え、年に1回ビッグアンケートも行なっています。
「ビッグアンケートはものすごく多項目にわたっていて、例えば、毎日何時頃家に帰って、何時間テレビを見て、何時間勉強してというような生活習慣まで取材をかけています。あとはイベントなどで自分が実際に見ている子供たちの印象ですね。昔ながらのやんちゃで一種バンカラな男の子像っていうのは、やっぱり時代と共に変わってきて、全体的にやさしい子が多いのかなという気はします。なのでコロコロとしても、単に根性で突っ走れっていう一辺倒ではウケないところもあるのではと。ストーリー展開やギャグのテイストなんかはもちろん変わらない部分もあるし、チューンアップされていく部分もあります」
自ずと拡大していくターゲットに向けてできることを考えたい
読者のメインは小学校4年生を中心とした小学校中学年ですが、時代と共に読者層の幅も広がってきています。
「コロコロが小学生男子雑誌であるのはまごうことなきというか、小学校中学年をコアターゲットとした本誌作りをしていることに変わりはありません。ですが、以前は小学校を卒業したらコロコロも卒業していく、というか、むしろ卒業しろ、というようなつもりでやっていた、その方針はやめました。大きくなってもコロコロで笑って遊べばいいじゃないかと。最近では『週刊コロコロコミック』というWEBでの漫画掲載を始めていまして、そこにはコロコロ本誌のバリバリ小学生向けにはとどまらない作品群も載せています」
『週刊コロコロコミック』は2022年3月にコロコロオンライン内に創設された漫画サイト。中学生が主人公の作品「ぷにるはかわいいスライム」がSNSで大きな話題になるなど、好調なスタートを切っています。
「中学生など少し上の読者層も獲得できて、ターゲットが膨らんでいるというのが今のシーンなんですね。女の子の読者も増えています。アンケートの数字では女の子は少ないけれど、それは彼女たちがアンケートを送ってこないだけで、実際にはかなりの読者がいると思います。コロツアーで私は剣道着の衣装を着て、開場を待っている子供たちと順ぐりに写真を撮ったりしたんですが、以前と比べると女の子が相当増えている。男の子と一緒に来ているお姉ちゃんや妹だけでなく、女の子だけのファンも大勢来てくれていました。それも時代なのか、あるいは、これからは女の子もお兄ちゃんも大人も全員いらっしゃいという構えにしようと私は思っているので、そういうことも影響しているのかもしれませんが」
今はゲームやホビー自体に、男の子向け、女の子向けという領域がなくなりつつある時代。また子供も大人も同じゲームを楽しむなど、様々な垣根がなくなってきています。
「我々も男の子雑誌だからとこだわるつもりはなく、これからは年齢や男女を問わず、日々の生活ジャンルやファミリーをターゲットにした商品やイベントにもチャレンジできるんじゃないかと思います。我々の切り口で料理する仕方は変えませんが、題材はいかようでも、という自信は持っています。飲料だろうが食品だろうがファッションだろうが何でもできると思いますよ。あと、あんまり期待されていないかもしれないけど(笑)、学習も。今は学校の勉強だけでなく、プログラミングなど学習の幅が広がっていますし、子供の学習それ自体が堅苦しいお勉強ではなく、遊びながら学ぶという方向性になっているように思います。そういうところで、その堅苦しさを解きほぐすためのお役立ちはできるかなと」
コロコロが得意とするゲームやホビーも武器にして、子供たちやファミリーの日常にどう役に立てるかということも考えていると、秋本編集長。
「もちろん遊びの部分が最優先で、ゲームやホビーは漫画を作るのと同じ土俵上にあると思っていますし、これからも力を入れていく部分ではあります。その一方で、子供たちの日常生活にまつわるものは何でもネタになるし、タイアップとしても広げていける。子供だけではなく、今やお父さんやお母さんもポケモン世代だったり、20年キャラクターというものがどんどん出てきている時代です。我々がコロコロで取り扱っている題材というかテーマが、もう小学生じゃとどまらなくなっているんですね」
今後ターゲットは自ずと拡大されていくはずで、子供から大人までの読者が獲得できたとして、そこで何をするかと言えば、やはり基本は笑いや遊び、とのこと。
「大人になって仕事がしんどければギャグやゲームで息抜きする。要するに、まぁいろいろ面倒なこともあるけど、ゲラゲラ笑って過ごそうぜ、っていうのがコロコロコミックの存在意義だと私は思っているので、それをご一緒できるクライアントさんであれば、ぜひ我々の作品なりキャラクターなりを使っていただきたい。逆に言えば、そうしたクライアントさんのお力を借りて、読者の生活の支えになることができれば面白いなと思っています。お父さんと子供が一緒にゲームをしたりホビーを作ったり、こういう遊びはやっぱりコロコロでしょ、というようなコロコロカルチャーを作りたいですね」
常に新しいことにチャレンジするのがコロコロ流。コロナ禍ではオンラインイベントのほか、zoomを使ったオンラインサイン会も実施。YouTubeでの生配信後、サイン会参加希望者をURLの部屋に集めてセレクトし、順番に一人ずつ次の部屋に送って、漫画家の先生と対話しながらデジタルでサインをもらいURLを発行。それをダウンロードしてもらいました。
「この仕組みは一から考えてやったんですよ。読者の家と繋がっているので、モニターの中でそれぞれのご家庭の様子が伺えたりして、おもしろかったというか、ああ、こんなこともできるんだなという、手法の一つとしての経験値を持ちました。だけど、やっぱりリアルがいいねっていうことで、二度目のシステムは発動させていませんが」
しかしながら、こうした経験が今後役に立つ場面は大いにありそうです。
「フィジカルとデジタルのハイブリットはいくらでもアイデアがありますし、どんなことでも求められれば捻り出します。我々は何でも考える。それこそ逆提案で、こういうことができないのかって言われれば、うんうん唸って考えますよ。料理の仕方は我々流で、我々の味つけにしかならないけど、その味はブレさせずに何でも料理するのがコロコロ編集者ですから。なので規定のメニューはまぁ基本として、ある意味、無視していただいて、何でも相談していただければと。そうしないと新しいモノや成果って作れないですよね」
趣味は剣道という秋本編集長。土日は道場に通い、下は幼稚園の年長くらいから上は80歳に近い老若男女と共に竹刀を振るっています。一生懸命な子供たちを見て、剣道に限らず、本気があるから遊びもあると思う、とのこと。彼らがより元気になれるような遊びや環境を作っていきたいと語る秋本編集長のコロコロ魂は、新たなフェーズに向かっています!
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